ミヤウチ

グランツーリスモのミヤウチのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.3
例えるなら地を駆けるトップガン。
特に車が好きな人にはぶっ刺さる映画。

鑑賞前は「人気タイトルで客引きするだけの商売気の強い作品かな? 」と思って期待しないで観たけど、予想は良い意味で裏切られた。

導入部分の観客の関心の持って行き方から、展開に至るまで、良い意味でトップガンっぽくて、特に自動車が好きであれば始まった瞬間に物語に入り込めるし、そのままのテンションを維持しながら最後まで退屈させない、無駄のない構成と演出で、アクション映画としても、人間ドラマとしてもかなり内容がいい。

作品のテーマになってくる「限り無くリアルに近いゲーム」と「リアル」の対比はよく描かれており、それが作品の展開に深く関わってくる脚本が良いし、それを絵として見せるための「スピード感」と「細かい駆け引き」を両立させて見せる演出面も良い。

特に、ランボを日産が圧倒するのとか、モータースポーツの裾野が庶民に広がるメタファーとして好き。(まあ、GT-Rはすげー高いけどね)

一方で、三点、気になる点はあった。

1つは「リアル」なレースにしかないフィジカルな負担を、感覚に訴えかける形で見せる演出があまり無かったので、特に初めて実車でのレースに挑む序盤で、それこそ『トップガン』のような感覚的な描写がより描かれていれば、なお良かったと思う。(恐らく、実際のヤン・マーデンボローさん本人も一番苦労したのはそこだろうし、それも含めてそう思った)

2つ目は、実際のレースや実在のサーキットにに関して、モーターファン以外が知らないであろう知識を、ほとんど説明なしに演出や展開に盛り込んでいたので、「ル・マンと聞けばどれぐらい権威があるか分かるでしょ?」とか、「ニュルブルクリンクと言っとけば、どんだけ難しいコースが分かるでしょ?」みたいな感じで、演出の妙を観客の事前知識を信用しすぎた形で提示されていたのは、やや不親切であるように感じた。

また、せっかくリアルとゲームの対比を描くなら、リアルなモータースポーツは、メカニックのような裏方ありきの「チームスポーツ」なので、もっと彼ら対するリスペクトのある描写があっても良いと思う。

ただ、それ以外は相当良い作品なので、普通に面白い映画観に行くテンションで観に行って良い作品だと思う。
ミヤウチ

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