ビクトル・エリセ監督が31年ぶりに撮ったミステリーと知り、初日に劇場で鑑賞。三時間近くの長尺なのに、熟した世界観は心地よく、最後まで一人の俳優の再生を願う揺るぎない気持ちと力強い一本の筋に惹き付けられた。
物語はまるで小説を読んでいるかのようなきめ細かさと、一ページずつめくる楽しみがあり、観客をうまく誘導していく展開で飽きさせない。
役者の人間力と表現力を十分に引き出す長回しとアップ。横長の画は、引きの時に効果を表すことを知った。
映画愛に溢れていた。私はそんなにわからなかったけれど、くわしい方はたくさんのオマージュを発見できるのではないかしら。
老いというなかれ、思いどおりの人生を送れずとも、熟すことは芳しい。記憶に閉じ込めた＜映像の世界＞は美しい。瞳をとじて。記憶の美しい時間は奪われない。
