はみー

瞳をとじてのはみーのネタバレレビュー・内容・結末

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ビクトルエリセの新作が劇場で見られるのは最初で最後だろうから「3時間か…絶対寝るやろな」と思いながらも行きました。結果、ずっと飽きることなく観られました!すごい!
全く予備知識なしで行ったので冒頭「娘探して欲しい」をめちゃくちゃ時間かけて描くやん…秒で済むことを30分くらいやってるやん…さすがエリセ、と思ったら劇中劇(主人公のおじさんが撮った映画)だったので「エエーッ!?」ってなりました。
そこからは行方不明になった主演俳優を探すストーリーになるのですが、最初くたびれて見えた主人公のおじさんが海辺で賢いわんこと小説書きながらトマト育てたり魚とったりして暮らしているのを見て「いいなあ〜!」と思いました。
とにかく画面内の平均年齢が高い。あとしょっちゅう雨が降ったり、ご陽気な感じがなくて一般的に想像するスペインって感じはしないです。画面はずっと静かで、怒りや混乱などがないわりに寂しさみたいなものが流れている。でもみんな優しい。
乱暴したり悪意を持った人が一切出てこないのでもうずっとこれを観ていたい…って気持ちになりました。
一番重要なポイントになる場面でアナ・トレントの「ソイアナ」が出てきて「ワーーー!!???」って感情がぐちゃぐちゃになり、涙がドバーと出てきてその後あんまり覚えてないくらいです。
あれは…卑怯でしょ!感動したとかでもなくて、観客のほとんどはミツバチのささやきのあのシーンを知ってるはずで、しかもあの小さな女の子が今こんなに立派になって…ということは自分も同じだけの年数が…みたいな感慨。
すごい伏線回収するやん、みたいな。エリセ監督が映画を撮れるほどお元気で意欲もあって、それが日本の映画館で全国公開されて、自分も観に行ける(金銭面や3時間の映画を観に行けるという時間的健康的余裕)状態にあるっていうのが幸せで、特別な体験だなあって…
「映画的」な事件は何も起こってない(アクションとか、裏切りとか死とかそういう要素)けど、登場人物たちにとってはものすごいドラマだったはずで…作品というよりも色んな人の人生をこっそり見せてもらったような。
ていうかラストが完全投げっぱなしで「で、出た〜!こういう系久しぶり〜!」と思いました。それも含めて本当に観に行って良かったです。
はみー

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