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瞳をとじてのhiyoriのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.8
ビクトル・エリセの作品。失踪した友人の過去と現在を巡る物語。168分という長尺だが、中身は具体ではなくむしろ抽象。描いてる部分より描いていない部分の方が多い。もたらされる自分を自分たらしめるものは何かという問い。映画監督と俳優にとってそれは名前や肩書きなどではなく映画でしかなかったということ。老いはその後の人生を物憂げにするばかりで現実を突きつける。空白の時間に何があったのか詳細は描かれないが、海辺で慎ましく暮らす姿からその背景が垣間見える。目には見えないもの、目を閉じて瞼に浮かぶもの、そんな幻想を取り戻したいと思えるまでに必要な時間が本作そのもののような気がしてならない。人と人とが同じ空間で同じ時間を共にしているを映すことがどれだけ映画的なことなのか。映画についての映画でその根源を辿るような手法が採られた作品であることが何より素晴らしいことではないだろうか。
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