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瞳をとじてのmstashdのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.2
「ミツバチのささやき」を20歳くらいの時に見て、未だに自分の中でアンゲロプロスの「霧の中の風景」に次ぐ傑作であり続けている。テオ•アンゲロプロスとビクトル•エリセは間違いなく今の僕の感性を育んでくれた監督。アンゲロプロスが亡くなってしまい、ビクトル•エリセも作品を作っていなかったから、心にポッカリ穴が空いたままだったが、なんと30年ぶりに新作が発表された。

刻の間を感じさせない、変わらない映像世界と、現代的とも言えるかもしれないキレのある描写。海辺の描写などは、アンゲロプロスの「永遠と一日」と似た雰囲気も感じた。
未完で終わった作品や「ミツバチのささやき」のアナの出演など、氏の映画人生の集大成として作られたようにも感じる。
オマージュらしきものも随所に散りばめられている。
そして、これまでの作品同様、物語の確信は語られず、明らかにされない

ビクトル•エリセの作品は少女の強い眼差しが特徴的だ。この作品でもそれは最後に現れる。少女だけではない。登場人物それぞれの眼差しが強調されて描写される。

瞳を閉じるということ。
それは眼差しを描き続けた監督がメガホンを置くということなのか。
それとも真実を捉えるには、見えないものを目で追い続けるのではなく、瞳を閉じて心で見なければならないということを監督の映画人生を通して伝えたかったのか。

「瞳をとじて」というタイトルに幾多のメッセージが込められているように感じてならない。

監督の作品をまた見れてよかった。
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