日傘

瞳をとじての日傘のネタバレレビュー・内容・結末

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

登場初っ端からアナトレントの超アップシーンがあるのだが、伏せた目を瞬かせた時の瞳が、本当に、6歳の時のアナと同じでびっくりした。なんというか眼差しがたたえる光が同じなのだ。私たちが見たかったものを監督が惜しみなくひけらかしているよう。
映像に刺激も花もあまりなくストイックに努めており特に前半はやや退屈。
しかしミツバチのささやきを過去に鑑賞して、これまで胸に抱いて来た人はこの映画に心が揺れないわけがない、「私はアナ」と呟くシーンからこっちずっと込み上げてくるものが喉を締め付けていた
あらゆるマテリアルに翻弄される時代に、「名前は重要ではない」と巨匠が言う。
ラストシーンで、スクリーンに注がれる幾数の視線、それを見つめ返す視線、わけもわからず泣いてしまう。 分岐したもうひとつの人生を、目を閉じて見つめ直す、信仰が奇跡を起こすことの尊さを知っている。
「目を閉じて(自分の内側に)話しかければ、何時でも会える」
「私はアナよ」…
これが円環の回帰だとしたら、ビクトル・エリセその人の人生を見ることの重さを感じ取っているのだな、と思う
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