あぴ

瞳をとじてのあぴのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.4
出会えて良かった。この作品もそうだし、映画というものに対して。数ヶ月前までは全く興味がなかったし、みはじめたのも最近。作中でのセリフのように映画で奇跡は起きないにしても、自分が世の中の物事について色々な角度から考えるきっかけになったと思う。そういった意味で自分は映画という存在そのものにとても感謝している。監督の映画に対する熱い思いみたいなものが込められているからこそなのか?
映画館で他の映画を観た時にトレイラーが流れる。その度に瞳を閉じてのトレイラーを目にした。ピアノの流れ落ちるようなあの音、多用されておらずそれがまた良かった。終わり方も、俗にあるような「ここからの想像はあなたにお任せします」のような安易な(とか言ったら失礼だけど)ぷつっと切れてしまう感じではなく、緩やかに終着していくような…そんな感覚に陥る。
そこでもう物語が最高潮を迎えると言うか。終わるべくして終わるというかそんな感じか

安易な結論、ぶつ切りからのエンドロールにもっていかず、あの形で終わったのが良かった。トカゲの尻尾を切ったけど、えっ血出ないじゃん。激しく流れて来ない感じ。他のは血しぶき。みんな違ってみんないい。(?)
いつも結論が提示されない終わり方をすると、映画を観終わった後に毎回頭にはてなマークが連続で10個くらい浮かぶが、不思議なことにこの映画は逆にこの結論が心地よい。なんでだろう。

人間は多くの物事に対して早急に答えを求めがちだなと思う。分からないものを明らかにしたい性質。名前をつけたがる。はっきりさせたい。そうしていくうちに目に見えないもの、言葉に出せないもの、うまく表現できないものが周縁化される。劣位なものとして置かれる。特にこの社会で生きていると陽の部分にだけが褒められるから、そこに自然と目が向く。明らかなものが好まれる。

光があるのと同じように、影がある。陽があれば陰がある。
この二面性、二面と言うかグレーゾーンの塊みたいなもの、うまく表現できず言葉にもしにくいもの。しかし心のどこかに確固として存在しているもの
そういうところに人間らしさとかその人の葛藤とかがあるんじゃないのか。それが確固としてあるから、という理由で生まれる信頼。
その人間をその人間たりうるものにする要素。それがあるんじゃないのかな、と思った
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