まずファーストカットから、あれ?予告と違うぞ、と思わされるフィルムの質感。「ミツバチのささやき」でも観たような少し離れた距離からの建物の外観。エリセの映画が始まるんだと言う高揚感。
一連のシークエンスが終わると舞台は2012年。画面はデジタルの質感に。
この切り替わり方だけでも監督の怒りが伝わって来る。
中盤のサイロに漆喰を塗るシーン。
倉庫で見つける「列車の到着」。
アナ・トレントの台詞。
終盤に出て来る映画館の寂れ方。
主人公が振り向くシーンでの光と影。
スクリーンと登場人物との切り返し。
愛憎の入り混じったような映画についての映画に、30年ぶりの新作という事実が重みを加えて、今年最大の事件になっているのではないでしょうか。