ビンさん

湖の女たちのビンさんのレビュー・感想・評価

湖の女たち(2023年製作の映画)
3.5
琵琶湖畔にある老人介護施設で、100歳を超えるある利用者が低酸素症で亡くなる。
人工呼吸器に誰かが手を加えた形跡があり、福士蒼汰演じる刑事は上司の浅野忠信とともに捜査にあたる。
容疑者として財前直見演じる介護職員が浮上。
福士蒼汰たちは執拗に彼女に取り調べを行う。
一方、福地桃子演じる雑誌記者は、亡くなった老人が数年前に起こった薬害事件に関わっていることで、独自に取材を行う中で、ある真実にたどり着くのだった。

吉田修一氏の原作を大森立嗣監督が映画化した本作は、ミステリー映画であると同時に、深い人間ドラマでもある。

老人の死去に関するエピソードと同時に描かれるのは、福士蒼汰演じる刑事が目をつけた松本まりか演じる介護職員。
この刑事、事件の犯人を見抜く力はダメダメなのに、相手がマゾっ気があるかどうかは見抜くことができる、ってどないやねん、と、至極滑稽に思えたのだが、まぁ、この二人の描写が本筋とは別に濃厚に描かれるわけだ。

驚いたことに本作はG指定ということで、どの世代でも鑑賞可能だが、直接に性描写が無いだけで、セリフはけっこうハードだ。
年端の行かぬ世代が観たら、おそらく何らかの影響はあると思うが知らんで、ほんまに(笑)

テーマはいささか広げ過ぎな感があるし、上映時間もちょっと長いな、と感じたけれど、これだけの物語を描くには仕方ないのかもしれぬ。
ただ、ネタバレになるので詳しいことは触れないが、本作も単体で観ればかなりの力作だが、ちょっと公開時期を考慮したほうが、作品の持つインパクト共々よかったのでは、とも思う。

福士蒼汰とパワハラ上司の浅野忠信の両刑事の、全然バディ映画じゃないバディぶりも興味深かったが、浅野刑事の粗野なキャラにも理由があったりと細かな設定はおそらく原作どおりなのだろう。

意外なキャラで三田佳子さんがいい演技を見せてくれる。
彼女の若き頃を演じる俳優、一瞬、永野芽郁も出演してるの? 思ったら穂志もえかさんだった。
目の辺り、二人共よく似てるなぁ、とちょっと驚いた。

タイトルは、琵琶湖で起こった一つの事件に関わってしまった女たちの群像劇という解釈でいいのだろうか。
それらを見つめる広大な湖の深淵を覗き込むかのような作品だった。
ビンさん

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