ビンさん

正義の行方のビンさんのレビュー・感想・評価

正義の行方(2024年製作の映画)
2.8
『正義の行方』

第七藝術劇場にて鑑賞。

92年に起きた小学生女児2名が殺害された「飯塚事件」のドキュメンタリー映画。

事件そのものは94年に犯人が逮捕され、08年に死刑執行された。
が、犯人の決め手となったDNA鑑定の脆弱さが明らかになった上に、最後まで犯人は自供しなかったことで、執行の翌年から現在まで冤罪を訴える再審請求が続いている。

映画は事件に関わった警察側、弁護士側、マスコミの三者にインタビューを行い、「飯塚事件」とは何だったのか、を問う内容となっている。

まず、ドキュメンタリー映画と書いたが、僕は観るまで知らなかったが、元々はNHKBSで放映されたTV番組で、それを劇場公開用に再編集されたのが本作。
そういうこともあってか、とっかかりのところから語弊があるかわからないが、多少食い付きが足らぬように感じた。

そもそもこの事件の内容について、痛ましい事件なのはわかるが、詳しいことまで触れていないな、と。
遺族感情を考慮しているのも判るし、DNA鑑定云々ということで察してよ(ウィキペディア辺りで調べれば判るのだが)、という作り手の考えなんだろうけど、オリジナルな映画だと思っていたので、なんか甘いな、と感じたが、土台がNHKのTV番組なら仕方あるまい。

映画は死刑判決が出てから執行までが早かったことと、先にも書いたが当時のDNA鑑定の脆弱さ故に、冤罪の可能性も指摘していく内容になっていて、作り手のスタンスは正直なところ中立ではない。

僕自身は死刑制度反対ではなく、それこそ司法でもって十分に吟味されたうえでの死刑ならば、犯罪者はそれが罪を償う意思表示にもなるだろう、と考える。
まして、今回のような凶悪な事件なら、余計に自分の命を捧げて罪を償うべきだと考える。

しかし、本作で描かれているような、鑑定の脆弱性等々の上での判決となると別問題だ。
結局のところ、本作でも決定的な答えは出ぬままに終わっている。
既に当事者は処刑されているので、死人に口なし、というわけだ。

ただ、視点を変えてみて、死刑囚が本当に犯罪を犯していたらどうだろう。
そもそも、犯行当日のアリバイは無いし、DNA鑑定にしても脆弱性はあっても、犯人と採取したDNAが一致しているのだから。
当時の資料を担当者が廃棄した、というところも映画は指摘していたが、故意ではなく、あってはならぬ事だが、うっかり破棄した、ということも考えられないだろうか。

他にも死刑囚が犯人である状況証拠は幾つもあるわけで、死刑判決から執行まで短かったのも、タイミングと言ってしまえばそれまでだが、そういうことだったのかも、と思えなくもない。

いずれにせよ、真相は藪の中であり、これまでの証拠等をひっくり返すような決定的なものが出てこない限り、このままの状態が続くような気がする。

というような堂々巡りが頭の中で巡ってしまう、そんな作品だった。
ビンさん

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