「書けない、書かない、書きたくない!」
『九十歳。何がめでたい』の予告ではない。
この映画のレビューのことだ。
困った。
書けない。
何と書けばよいのやら...
この曖昧模糊とした心情をどう言語化したらよいのか。
得体のしれない嫌悪感が自身の中に漂い、レビューを書きたくないという気持ちにまでさせる作品だ。
いっそレビューを書かないか。
そんなことまで考えてしまった。
介護療養施設で起こった老人の不審死事件
ミステリーやサスペンスを予想して観ると、肩透かしを食らってしまう。
二人の刑事
施設職員
事件を追う雑誌記者
薬害事件と731部隊
刑事と施設職員のインモラルな性愛
湖畔で起こる出来事は何一つ解決していない。
とっちらかったまま放置される。
解決しようとしても、大きな力で押さえつけられ、蓋をされてしまう。
関わる者たちは挫折感を味わい、深く傷つけられる。
そして正常には戻れなくなってしまう。
ある種倒錯した世界で生きていかなくては、自らを平常でいられなくしてしまう。
もしかしたらこの作品は、そうした人々を描こうとしていたのだろうか。
この世はままならない。
だが、壊れてしまっても生きていかなくてはならない。
湖畔で起こる出来事。
巻き込まれる人々。
その一切合切を湖は静かに、時に波風を立てながら見つめている。
朝も夜も。
そのすべてを飲み込んで。
時に湖底に引き摺り込んで。
余談
当然このレビューもとっちらかったまま。
松本まりかと福士蒼汰の体当たり演技。
ハラスメント刑事・浅野忠信の過去の慟哭。
福地桃子が癒しの存在(役柄ではなく)。
三田佳子の存在感よ。
観終わったその足で原作文庫本を買いに行く。
ポカン脳を補完せねば。