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トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代のnomoreのレビュー・感想・評価

4.1
くらった。
加藤和彦の華麗なる音楽史と天才にくらってしまった。

加藤和彦のことは知っている。自死してしまったことも。
だが、彼を"トノバン"と呼んだことはないし、崇拝したこともない。

私は彼のことを"オシャレなセンスの塊"としてしかとらえていなかった。
どちらかというと、カッコ良過ぎて敬遠していたくらいだ。
このドキュメンタリーを観るまでは。

「トノバンって、もう少し評価されてもいいんじゃないのかな?」

高橋幸宏が相原監督に話したことから、このドキュメンタリーの企画は始まったという。

ナレーションはない。
彼と関わりの深い音楽家や関係者の証言と過去の映像で、彼の音楽と功績を浮かび上がらせている。

こんなにも先駆的で革新的で多才な音楽家だったのか!

彼を語る音楽家たちのメンツが凄い!
彼に影響を受けたことを憚らない。
そしてその後の音楽シーンの中心となる人たちばかりなのだ。

あのYMOだって彼との繋がりがなければ結成されていなかったのではないか⁉︎
高橋幸宏と坂本龍一はインタビューで登場しているし、細野晴臣の姿も見えている。

竹内まりやも最初は山下達郎でなく、加藤和彦だったんだ!

フォーク・クルセダーズの"帰って来たヨッパライ"の大ヒットから始まる彼の音楽キャリア。
(1968年にオリコンが始まって初めての1位曲だという)

すぐに解散して音楽を辞めて、料理人の道を歩もうとしていたらしい。
しかし、音楽業界が彼を放っておくはずもなかった。

その後のサディスティック・ミカ・バンドはあまりにも有名だ。
日本初の海外進出バンドといっていい存在だ。

アーティスト、作曲家、アレンジャー、プロデューサーなど様々な音楽家としての顔を持つ加藤和彦。

その音楽の振り幅も大きい。
フォーク、ロック、ボサノバ、レゲエ、タンゴなど、時代の音を捉えて、芸術性さえ追求していく。

彼の音楽の一旦を垣間見て、日本における稀代で不世出の音楽家だと再認識した。

彼の存在がなかったら、日本のロック&ポップミュージックはもっと遅れていたのではないか。
それくらいの先駆性に溢れている。

今さらながら、加藤和彦の存在にくらってしまったよ。
遅過ぎるけれど。
彼はもういないのだ。

最後の"あの素晴らしい愛をもう一度"の新録風景で涙が溢れたのは言うまでもない。

彼を知る方はもちろん、音楽好きな方にはオススメ。
加藤和彦を通して、日本のロック&ポップミュージックの"その時代"を振り返ることができる良質な音楽ドキュメンタリーです。


余談
帰りは、サディスティック・ミカ・バンドの"黒船"と"あの素晴らしい愛をもう一度2024"を聴いた。

"黒船"は今聴いてもめちゃくちゃカッコいいプログレッシプロックだ♪
高中正義のギターが炸裂してる♪
ドラムはもちろん高橋幸宏♪

"あの素晴らしい愛をもう一度2024"は教科書にすら載っている名曲のリスペクトカバー♪
一緒に歌いながらまたも涙が溢れちゃったよ。
ギターも弾きたくなったよ。

盟友で精神科医でもある北山修の、彼への語り口が特に印象に残っている。
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