ナガエ

湖の女たちのナガエのレビュー・感想・評価

湖の女たち(2023年製作の映画)
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えーっと、どゆこと? まったく意味が分からんかった。うーん、これはなんともなぁ。

正直なところ、メインであるはずの「松本まりかと福士蒼汰の物語」が、僕にはなんのこっちゃ分からなかった。そしてどちらかと言えば、それ以外の話の方が面白かった。

個人的に一番好きなキャラクターは、文潮社の記者の池田(福地桃子)である。彼女を追う話が、個人的には一番良かったかなぁ。

物語の中では様々なことが描かれるのだが、メインとなるのは「介護施設で起こった殺人事件」である。人工呼吸器が作動していなかったのだが、メーカーの担当者曰く、「誰かが意図的に操作しない限りこのような状態にはならない」とのことで、警察は殺人事件と断定し捜査を行っている。

その捜査にあたっているのが刑事の濱中(福士蒼汰)と伊佐美(浅野忠信)の2人である。介護施設には「1班・2班」の区別、そして「看護師・介護士」の区別が存在する。その日、死亡した男性の担当は1班であり、1班の介護士だった松本(財前直見)が疑われる。しかし関係者から広く話を聞くため、2班の豊田(松本まりか)も事情聴取を受ける。

一方で、文潮社の池田は、「MMO事件」を追っている。17年前に起こった薬害事件で、50人以上が死亡、400人以上が後遺症を患っているという大規模なものだ。今回の殺人事件の捜査を行っている西湖署が、MMO製薬を立件しようとしたのだが、その直前、巨大な権力によって捜査を妨害され、立件を断念せざるを得なかった。当時の厚生労働大臣からの圧力があったと噂されている。

そんな事件を追う池田は、結果として介護施設での殺人事件にも肉薄することになるのだが……。

というような話です。

とにかく物語の中で、「豊田と濱中の関係」が浮いているようにしか思えない。「これは必要なのか?」と感じられてしまったのだ。作品全体としては、この2人の関係が「主」なのだが、これが「主」である意味がちょっとよく分からなかった。

そして、140分もある物語なのだが、その「豊田と濱中の関係」が「主」であるために、「従」である「MMO事件」はさほど深堀りされない。個人的にはそっちの方が面白そうなんだけどなぁ、と思うのだが、そういう構成の物語なのだから仕方ない。

さて、殺人事件の捜査は途中から、「松本への不法捜査」という形で描かれていくことになる。濱中と伊佐美が、「今どきこんな刑事なかなかいないんじゃないか」と思ってしまうような、バリバリに分かりやすい不法捜査を行うのだ。

このやり取りでは、容疑を着せられた松本を演じた財前直見(エンドロールに「財前直見」って表記されて、「え?どこに出てたっけ?」と思ったら松本役だったからマジで驚いた。気づかなかったなぁ)と、伊佐美を演じた浅野忠信がまあ見事でした。財前直見は、ホントに最後の最後まで財前直見だと分からなかったぐらい「小市民」を演じていたし、浅野忠信は「不法捜査を肯定するようなムチャクチャなことばっかり言ってるけど、何故か佇まいがリアル」みたいな雰囲気を醸し出していました。この2人の演技はホント、絶妙だったなぁ。

エンドロールの話で言うと「穂志もえか」と表記されて、こちらも「え?どこに出てた?」って思ったのだけど、こちらはエンドロールを見ている最中に思い出しました。三田佳子演じた市島松江の若い頃です。「メチャクチャ好きな顔だなぁ」と思ったのだけど、あれが穂志もえかだったか。『窓辺にて』とか『生きててごめんなさい』とかにも出てたけど、やっぱり好きだな、穂志もえか。

で、やっぱり物語としては、池田が追っている「MMO事件」が面白そうなのだ。こちらの話は、掘れば掘るほどなんだかかなり幅の広い話になっていって、途中で、かつてソ連で行われた「ハバロフスク裁判」の音声なんてのも流れたりする。しかし、先程も書いた通りあまり深堀りはされず、僕の感触では「中途半端だなぁ」という感じの描写で終わってしまう感じがある。残念だった。

一応全体的に、「湖」というキーワードで緩く繋がっている感じはあるが、特段それが重要なのかというとそれもよく分からない。まあ「湖」というのは最後の方のセリフにあったように、「どこにも出られない」という象徴として出てくるんだと思うけど。

ちなみに、たぶんまったく関係ないと思うが、「西湖署」というのは実在しなそうなので(西湖という湖はある)、「西湖」と「サイコパス」を掛けてるんかと思ったり。ま、んなことはないだろうけど。

うーん、ちょっとなんとも言えんかった。
ナガエ

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