チョコ山

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のチョコ山のネタバレレビュー・内容・結末

2.4

このレビューはネタバレを含みます

人は弱いから何かに縋る。
それは他人だったり仕事だったり趣味だったり学問だったり、、
究極、思想や哲学など持たず、中立な立場であり続けることが人として正しいことなのかもしれない。

本作の主人公は本編通してひたすらに特攻隊を否定する。
父親の自己犠牲による死が関係しているという動機は納得できるが、「他人のために命を擲つなど馬鹿げている」という思想を強く主張するにしては、本編通してあまりに芯が弱く感じる。
(そもそも、自分のために身を粉にして働いている母に「こんな状態で大学いけるわけないじゃん馬鹿みたい!」と父を否定し強く当たる時点で人道に反しているため、説得力のかけらもない)

特攻に向かう兵や、本気でお国のためと思い日夜見回っている兵に対し、「日本は負けるんだし意味ないよ!命大事!」と言い続ける無神経さには目を疑った。
時代が違うが故にこう生きるしかないと考えている人に自分の価値観が正しいと押し付けるのは、他国家を否定して攻撃する戦争と何が違うというのか。

本作では“生きる”ことこそ正しいという価値観を絶対正義とし、他は間違っているという描き方をする。ならば安楽死は悪か、介護殺人は加害者だけが絶対悪か。
戦争の根源は自らの種族を守るための戦いである。戦争の悪いところは、「国に踊らされ何も考えずに戦うこと」ではない「戦うこと」だ。

反転して戦争は正しいというテーマをラブストーリーに包んで泣けるような作品に仕上げれば、観客は戦争に駆り出されるのではないかという恐怖すら感じた。
もちろん戦争による犠牲は間違いだと思うし、繰り返してはならないことであるということが私含め国民に根付いていることは確かだろう。
だからと言ってどんな作品でもプロパガンダになりうる。現代のきな臭い世界情勢の最中、無神経にこういった作品が上映されるべきなのだろうか。

本作は、前述した「ラブストーリーに来るんだ戦争映画」ではなく、「戦争に包んだラブストーリー」としてつくられているのは、物語のプロットからみてもあきらかだろう。

また、タイムスリップの原因はもちろん、どうして現代戻れたのかという仕組みすら最後まで明かされない。
要素要素を作り込む気概がないのならば、下手に手を出さないで欲しい。
とりあえず、過去に送って面白がらせて命で泣かせてればいっか〜という魂胆が透けて見える。

そもそも脚本の細かいところに粗が目立つ。一つの一つのリアクションと物語の運びが破綻している。
そんな無茶苦茶なセリフを丁寧に演じていた福原遥と、子役。よかった。
チョコ山

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