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ほつれるのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
3.6
加藤拓也の映画か。

舞台演出とだいぶ違うんだろうな。
映画の特性と芸術性をだいぶ理解した上で作品を作っているのが見て取れる。
けど、なんだろう舞台の方が圧倒的によかった。

理由を考えたが、情報量と時間の関係か。
舞台は、言ってみれば常にワイドショット、全員が全員役者の表情が見れるわけではない。身体表現と位置関係、台詞が情報として入ってくる。
一方で、映画は、レンズ選択とカメラポジションを固定するため、視線が誘導される。
ワイドショットは、情報量が意外と多い。単純にキャラクターの数も多いし、表情が見れない分セリフの息遣いや、間に集中するし、シーンの中心人物以外の動きなんかも結構情報として入ってくる。それで、このテーマだったから、2時間半ずーっと頭を巡らせて、各キャラクターの背景と裏を読んでいく。そこで最後の口論とエンディングが襲いかかってくるのが面白かった。
一方で、視線が誘導されると情報が受け取りやすくなる一方で、情報が制限される。だからこそ、映画には編集が存在する。時間をフィクショナライズしないと、情報量の授受に差が出る。作り手が織り込む情報量に対して、観客が受け取れる情報量ってやっぱ違うから。

それがこの作品ではうまく行ってなかった気がする。
与えられた情報から想像することはできるんだが、想像しすぎると違う方向に行ってしまう可能性もある。のちに与えられた情報と自分の想像に齟齬が出ると、混乱してしまうため、そんなに想像をふくらましすぎることはしない。どっちかというと、映像の情報の明瞭度は高いので、そこで安心してしまう部分がある。
だったら、もっと選択肢を絞ってあげてもいいのかなと思った。要素を減らして、それを成し遂げようとしてたのだが、逆に要素を増やして、伝える部分は伝える、伝えずに想像させる部分は想像させるっていう分け方を細かくすれば、より多くの人に届くのかもしれない。
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