柏エシディシ

哀れなるものたちの柏エシディシのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
先行上映にて。期待以上の傑作。
誤解を恐れずに言えばヨルゴス・ランティモス作品の中では最も判り易く開かれた作品。でも、18禁。モザイク無し。
単純にめでたしめでたし……で終わらせない最終章の顛末が、もーう大好きで、個人的には最後にもう一捻り欲しかった「女王陛下のお気に入り」を越えてきた。

ほとんど野生動物の様な幼女から成熟した知性を備えた大人の女性まで、人工物の様な違和感から聖女の様な神々しさまで、一人で演じ切ったエマ"フランケン"ストーンに脱帽。
そう、この物語は新しいフランケンシュタインの怪物の物語であり、その作者で、女性文学者の先駆としてのメアリー・シェリー自身の意志を引き継ぎ、更に昇華させた現代のお伽話。究極のフェミニズム映画で人間讃歌。

どこを切り取っても最高な映画で語りきれない。
ウィレム・デフォーの新しいフランケンシュタイン博士=父像は良かったし(狂人だけれど期せずして母娘を救ったという矛盾が深みを増す)、世の男性(哀れなるものたち)性の、その浅ましさと滑稽さを一身に体現するマーク・ラファロも最高だ。
キャスト陣はみな素晴らしい。
客船の老婦人がステキだな、と思ってたら「マリアブラウンの結婚」のハンナ・シグラ!
ロビー・ライアンの撮影も全編素晴らしいというか完璧。前半のファンタジックなセット中心からベラ自身の成長と共にリアリティを纏っていく美術も眼福の限り。しかしそんな中に、あの可愛くも不気味な動物たちがなんとも言えない諧謔を味合わせてくれるし、全体的に不穏。なんかジュネ/キャロっぽくて好きだ。
調子ハズレで不思議と癖になる劇伴も快感で、Dolby Atmosでの鑑賞は正解であった。サントラ欲しい。

正式公開したら、また観に行きたい。
ディテールもまだまだ楽しめそうだし。
柏エシディシ

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