ヒラッツカリー

哀れなるものたちのヒラッツカリーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.4
劇中見ていてずっと、「ファンタジーやなぁ」「そういえばおとぎ話って本当は残酷だったけど子供の教育のために少し改正してんだっけ」とか思って。
この映画のジャンルって何になるんだろうって気になって確認したらば「SFラブコメ」になるんだと。当てはまる様な…全然違う様な…形容し難いっつうか、言葉に表せないジャンルの映画だわな。

めちゃくちゃ変な話なんだろうなとは予告やリーフレットでわかっていたのでこれは好きそうだぞ、と感じて。アカデミー賞ノミネートだもんでとりあえずね、そこら辺のビッグネーム賞は見ときましょうってことで。

いやぁ……すっっごい変。
変態であって、天才であって。
バカと天才は紙一重とか言うけども。
画の撮り方、レンズを替えての表現。
色彩感覚。空や建物の色味、煙突から出るケミカルカラーな煙。
たぶん、ベラが家から出たことがなくて、"100人以上の女を知る狼"ダンカンとの駆け落ちして初めてみる景色を表現してるんかもなぁって。もしかしたら、いや、画角や広角や魚眼での見せ方もそうなのかもと。
そう考えたら益々変態性が見えてきて圧倒されるだろうな…とか思い返して。
動物の扱い。胴体と頭をすげ替えているペット達。ガチョウの頭に犬の体。豚頭にニワトリの体、とか。普通に生きてるからそんなことができるマッドサイエンティストのゴッドウィンだからこそ、「ベラ」を作り出せたのかな、と。

あとは、なんっつってもエマストーン。
ゴッドの下の閉鎖された屋敷の中では1歳児から5歳児、船での世界旅行から刺激を受け急激に成長していき、思春期の子ほどに見え。パリに強制的に船から降ろされる頃には学生。あの役の幅。この女優、すげぇなって。「ちー」つっておしっこ垂れ流してた女の子がいつのまにか自分で稼ぐことを理解し社会主義勉強会に参加し自分の人生のあり方まで考えていくとは。ベラは元から天才だったのかも知れないなぁと。
いやしかし、エマストーン、凄い。ネームバリューがある俳優なのにあそこまで体当たりな役所で。元々好きですが、もっと好きになってしまいました…
ダンカン。マークラファロが映るたび、最初は興味本位で駆け落ちしたものの、自由奔放な子供に振り回される叔父のような立場となり、最後は人生自体破滅に追いやられる。これもまた童話の中のダメな方の人感が醸されてて。マークラファロが映る度に頭に手を当てて「ぬぁぁ!」って唸ってて、出てくるたび面白くて。元からいけすかないクソ野郎だったんだな、と。しかし愛すべき男だわダンカン…
ゴッドウィンバクスター。ウィレムデフォーの顔が!つぎはぎだらけ!!
フランケンシュタイン染みてるけども、彼自身が天才。発想が科学者。やることなす事が研究。
胃液が出ない体にしてみようと自分から摘出したもんだから、消化する為の装置をお腹に付けて食事のたびに「クカァァァッ…」とマンガのような声を上げ口をあんぐりと広げシャボン玉を出す。摘出しなくてもよかったんじゃ…と聞くと「そうであった」と答える。やってみないとわからない生粋の学者。その佇まいには悲哀と父性が溢れている様に感じて。凄い魅力的。

世界観も画の作り方一つにとっても、奇妙さを醸し出す変な音階の音楽も。魅力満載なキャラクターも、全部が変な映画だったけどこの世界観はなんでかスッと入り込めたし表現に圧倒はされたけども楽しめた作品でした。
定期的に見たくなりそうです…
かんなり18禁ですが。。
(カップルで見にきてた人が居たけど、これカップルで見てたらどんな気持ちで居ないといけないんだよって思ってしまいました)
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