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哀れなるものたちのbennoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
ヨルゴス・ランティモス監督作品…
      8作品目…。

もう、アカデミー賞衣装デザイン賞は確実だと思います!! タイトルクレジットのキルトの刺繍の映像から既に素敵!!

ヴィクトリア朝時代が舞台のようですが…美術や衣装は、明らかにその時代を逸脱しており、ゴージャスなビジュアルに目が楽しくて釘付け!!…クラシカルなのに近未来のようなファンタジー…馬車の造形がめちゃ可愛い…好きな写真家のひとりでもあるティム・ウォーカーの世界観…散りばめられた濃厚な色彩が堪りません…。


ストーリーもいつもながらのぶっ飛んだ設定…。

妊娠していた女性ベラ(エマ・ストーン)が自殺を図り天才外科医バクスター(ウィレム・デフォー)によって蘇生されます…しかし、お腹の中の胎児の脳を移植…。

   見た目は大人、でも頭脳は胎児…。


コナンの逆パターン!! …カタコトの言葉とよちよち歩きの幼児そのもの…エマの演技が惹きつけます…。

ところどころで出てくる合体動物も可愛い〰︎ෆ*

見た目が美しいベラ…弁護士のダンカン(マーク・ラファロ)は彼女に近づきます…。

しかし子供ならではの好奇心旺盛なベラ…彼女はダンカンに外の世界が見たいと言い、ふたりはヨーロッパの旅へと出かけることに…。

あまりにもイノセントで倫理もルールも無い彼女の性の解放はとってもオープン…最初はベラを支配しようとするダンカンですが…彼女はハイペースで色んな情報を吸収、理解力も高め…生きる術を身につけていきます…。

どんどん自我に目覚めていくベラに対し…遊びの気持ちだったダンカンは女々しいくらい本気モードになり立場が逆転…ふたりのそれぞれの変化がとても面白い…特にラファロのクズエロおやじっぷりが最高!!



撮影はクセのある映像だと思ったら魚眼レンズを駆使した《女王陛下のお気に入り》のロビー・ライアン…今作でも歪みのある映像にズームの多用…それに合わせた不協和音も独特の雰囲気を醸し出します…モノクロからカラーのスイッチもベラ視点で面白い…。


また、大好きなキャストが他にもふたり!! ファスビンダー監督のミューズであるハンナ・シグラ…とっても可愛らしい老婦人役…彼女はベラにとって知性の扉を開く大きな鍵となります…。

そして彼女の代表作である《マリア・ブラウンの結婚》は自立していく女性がテーマ…ベラと重なるところも意図的なのかなぁ〰︎??

そしてもうひとり…キャサリン・ハンター!! …ベラはあまりにピュアであることから職業の概念や差別もなく、お金が稼げるなら…と、安易に娼館で働きます…その娼館の女主人…アクの強〰︎い演技を魅せつけます…流石の貫禄…観れて嬉しい〰︎!!

   We must experience everything,
not just the good…

良いことだけじゃなくて、色々経験しないと…


ベラの自立への成長譚でもありますが…この上ないピュアな"愛"についての物語…親子愛や男女を越えたジェンダーレスの愛…もっと大きく人類愛…助手マックスのベラを想う気持ちがとっても素敵…。

今作はフランケンシュタインをモチーフにしているようですが…根本的に違うのはベラは人間を愛していること…それは父親代わりで彼女の創作者バクスターに大きな愛情をもらっていたからなのだろうと思います…。

ヨルゴスさんにしてはとっても真っ当な作品…と思ったら…フッ(⸝⸝⸝≖ᴗ≖​⸝⸝)‧⁺✧*
    
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