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哀れなるものたちのtoriten45のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5
悪趣味がクセになるような強烈な映像と不安定さが印象的な音楽のシャワーを浴びてきた感じ。映画館を出てきた人たちみんな魂抜けてた顔をしてたようなしてないような。前衛的だけど洗練されたタッチで描かれているのでこの独創的な世界観に抵抗なく入り込むことができました。

禁断の技で死から蘇った女性が、マッドサイエンティストの館を飛び出し、世界を巡る冒険の旅に出て成長する様子を描いた物語。至ってシンプルなだけに2時間半弱はちょっと長かったかな。最初はクリエイティブなビジュアルに目を奪われて見入ってましたが途中で飽きちゃったかも。

マッドサイエンティストの館の主人がウィレム・デフォー演じる天才外科医で、つぎはぎだらけの顔がインパクト大。英国アクセントが妙にマッチして役作りへの力の入れようがうかがわれます。

この怪しげな館には“犬×アヒル”みたいに実験で合体された奇妙な動物が走り回っていて、これまた滑稽だけど動きが妙にリアルで世界観を深めていました。

そして極めつけが天才外科医の手によって死から蘇ったエマ・ストーンが演じる女性ベラ。動きも会話も奇天烈で誰彼かまわず“熱烈ジャンプ”しちゃう。まぁ過激だこと。

ヨルゴス・ランティモス監督作品は『ロブスター』('15)と『聖なる鹿殺し』('17)を何度か鑑賞して、圧倒的な後味の悪さと気持ち悪さに品の良さを絶妙にブレンドさせた作風が好きになりかけてきたばかり。今回は映像、音楽、キャラ作りは一段とグレードアップした感じはありましたが、他の作品と比べると深みが感じられず、ちょっと物足りなかったかな。
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