待ちに待ったランティモスの新作。相変わらずヘンテコな世界が堪能できて大満足だった。
医学博士のゴドウィンは、自殺した妊婦の新鮮な死体を手に入れ、胎児の脳を母に移植して復活させた。彼女はベラと名付けられ、大切に育てられていたが、弁護士のダンカンに唆されて世界を見て回るグランドツアーをする。
その旅の中で、貧しい人や、老人など色々な人に触れ、知性を獲得していく。そして、ダンカンのお金が尽き、パリで娼婦として働きながら、医師の道を進むのだった。
旅の行程でリスボンやアレキサンドリアなどに寄るが、この場所の美術がファンタジックで、今までの現実に即していた作品とは一線を画していた。アカデミー賞でノミネートされまくっていたのも納得。変な音楽も大好きだった。
ストーリーは去年「バービー」を見ていたからかかなりわかりやすく。ベラが旅を通じて女性への偏見や差別に晒されていき、女性としてそれを乗り越えて自立していく。女性の身体だけから女性を作るというのはアダムを必要としないイブとして反キリスト教的でもある。男として生まれたフランケンシュタインの怪物とは違い、最後には自分を確立し生きていく選択をするのも時代に合っていた。
変なビジュアルに対して芯の通った内容が伴っていて、かなり見やすい作品だったが、愛とは分離した即物的セックスや、解剖シーンなどのグロテスクな描写も多く、人には勧められないのが難点。旅の中で、アテネに向かうがたどり着けないのが、故郷で作品を作れないランティモスを重ねて見てしまった。