キリコ

哀れなるものたちのキリコのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8
男根女陰礼賛(EDの隠れ性器意匠探し楽しい)、300%のリベラルフェミニズム、ここ100年の映画史・思想潮流、ガールズエンパワメント、が詰まった一作。
あいかわらず寓話的。行きずりの恋を含む「冒険」はギリシャ神話の英雄あるあるゆえ、近現代女性版英雄譚という見方もできそう。

オチも含めて毒気やショック少なめで、大衆向けに寄せてるのでは。たどたどしい歩き方のエマ・ストーンくらいの情報量で観たから、もっと不条理で露悪的で最悪でキッチュなやつかと思っていた。ので『女王陛下のお気に入り』の方が好きかも。刺激的(非性的な意味で)なシーンは、家から出るまでの幼児状態時がほとんどの印象。今回はこんなハッピーにスッキリ終わるんだ~って感想だった。

序盤は20年代~の怪人映画っぽい(多くの人が挙げている通り『フランケンシュタイン』みたい)。魚眼レンズ、画角で遊んでる。ベラの蒙が啓かれるに従って世界が色づく鉄板演出。そのあとは谷崎潤一郎みたいな悪女ロマンスになり、その後社会派ヒューマニズムフェミニズムへ。冒険心と放埒(?)により、ダンカンをブンッブン振り回す一連の流れはかなり笑えた。
行動的で現実的な理想家。貧しき者たちへの同情が突然芽生えたのだけ唐突ではあった。ちょっと前までギャン泣きするガキ殴ろうとしたり、おばあちゃんを海に落とすアイデアにウケたりしてたじゃん!

マーク・ラファロ、ちょうどよく情けなくて美味しい役回りだったな。
キリコ

キリコ