たけうち

哀れなるものたちのたけうちのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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成人女性の身体に赤ん坊の脳を移植し、甦らされたひとが何を感じて、考えて、生きる意味、喜びを見つけたのか
その軌跡を余すところなく見せてくれる映画

冒頭に登場した“彼女”は、まだ乳幼児のような話し方と仕草だったのが、みるみるうちに成長し、言葉は滑らかに洒落た表現を身につけ、自身の身体の“幸せになるところ”を発見し、それを素直に追究する
行動や行先を制限する産まれた家を離れ、旅をして、様々な人と出会い、見聞きして、親しくなる人も、議論を交わす人も、性行為をする人も、そして彼女が哀れみを向けた人も、たくさんたくさんいた

彼女の意志も、その身体も、常に自分のもの、自分だけのものなのだ
それは当たり前のはずなのに、意志や言動、身体をどう扱うのか、常に干渉に晒される
それに敢然とベラは否と言い続けた、その揺るがない姿勢が、素晴らしい、こうありたいよなあ、こうやって生きたいよなあって泣けてくるのです

ファンタジックなエンタメの中に、強いジェンダー史観やフェミニズムが落とし込まれている作品はいくつかありますが、この『哀れなるものたち』では、性差よりももっと強く、自分の意志も身体も、自分だけのもので、それをどう取り扱うかは自分が決めるべき、決めていいんだ! そうでないと、人生つまらんだろう、だって生きているんだから!
そうシンプルに伝えてくれている作品でした
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