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哀れなるものたちのやぎのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5
ヨルゴス・ランティモス『哀れなるものたち』。異形のファム・ファタール映画は、『バービー』と並ぶフェミニズム映画になり、魚眼レンズとズーム撮影、パンニングの多用に彩られながら、エマ・ストーン史上屈指の名演技が輝き、ヨルゴス映画がついにエンターテイメントとして突破した傑作‼️オススメ🐐

エマ・ストーンの演技はぎこちない徒歩や激しいセックス(熱烈ジャンプ!)に目がいきがちだけど、やはりベッドに横たわっているシーンの多さに注目すべき。静と動の振れ幅が素晴らしく、ヨルゴスは横たわっているエマにこそ惚れきって撮っているとしか思えない。本作は横たわるエマ・ストーンの映画。

ヨルゴスは今回もお得意の閉鎖空間(監禁)を扱ってるけど、本作は何度も閉鎖空間とそこからの解放という振れ幅を美術や撮影によって表現していて、それがすごくうまく行ってる。モノクロからカラーになる演出なんて使いふるされたものだけど、今回はそれが活きていた。映画的な快楽があった。

フェミニズム映画、もしくはエンパワーメント映画って表現は好きじゃないけど、本作は『フランケンシュタイン』へのオマージュがあったり、シナリオもあからさまにそういうところを狙ってるのは間違いない。でもそこを生真面目にやるのではなく、ブラック・ユーモアに落とし込んだのがうまいところ。


しかし、ファム・ファタールものってフェミニズムと表裏一体なところがあるんだな、というのが本作からの学び。賞狙いとか言われそうなとこもあるし、ここはヨルゴスにとっても勝負だったんじゃないかな。エマ・ストーンがプロデューサーとして関わってるのも大きいんだろうね。良い映画でした。

どこか奥歯に物が挟まったような言い方になってるのは、やっぱりヨルゴスの作品にしてはどこか理性的に納得できる、スッキリした作品になってるところに原因がある。でもまぁ、それはいいじゃないですか、こういう作品をヨルゴスみたいな人がちゃんと撮って、評価されるのは大事だよね、という気持ち。
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