このレビューはネタバレを含みます
おもしろかった！
大まかにいえば死んだ女に生きていた胎児の脳みそを移植して蘇生することから始まる成長物語。さらにいえば、知的好奇心から様々な経験を積むことで世界を知り、選択の自由を得ていく、女性の社会的地位の獲得物語。
すべての伝えたいこと、見せたいものがはっきりとしているため非常に入り込みやすい映画だと思う。特に知的好奇心と並んで描かれていた性的好奇心が顕著な例で、男は100人以上の女を抱いても自慢話になるが、女は1人以外に抱かれれば売女だと叱られるという貞操観念のズレや、娼館にいる女は当たり前に喜んでその仕事をやっているという先入観など、現代社会にも通ずる問題もあった。
冒頭のベラ（外を知らない頃）の見た目にそぐわない幼さは、知識のないところから始めるというものと、前の人生で凶暴な夫に思考を奪われて生活していたものとにかかっているのだと考えた。以前のベラは悪い人間だったと分かる描写はあったものの、夫の「やっぱり女にはこうだな」と銃を向ける仕草から、少なからず彼女も使用人と同様の扱いを受けていた部分があったのではないか。そのため、この物語は『外の世界を知ることで成長していく姿』と並行して『男性の支配下からの解放』をも描いているのだと考えた。
やりたい事を見つけた冒険の果てに、元いた場所に帰ってきて、結局女性の型にはまったような選択肢を取るのかと思いきや、そこから元来の自分自身を見つめ直すパートに入る構成は非常に素晴らしい。成長には反省がつきもので、その部分をなあなあにせず、しっかり見せていたのでかなり良い。
また、気の抜けた音楽とポップな表現、監督の独特なユーモアと派手な色づかいで画面の満足感がかなり高く、映像としてもずっと楽しく鑑賞できた。ダンカンが暴走したら相手が誰であれ腹をグーで殴られて無理やり落ち着かせられるところがおもしろい。
とても良い作品だった！
