デパルマ

哀れなるものたちのデパルマのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
めちゃくちゃ笑った。最高だった。ヨルゴスランティモスってDogtoothとかロブスターとか鹿殺しとか女王陛下のウサギとか動物を使って人間の権利や尊厳の話をしている。今回の作品は、リプロダクティブ・ライツがテーマ。主人公のベラは彼女をコントロールしようとする周囲の男たちの手を振り解いて、セックスと知の探求に突き進む。彼女は凄まじい成長速度で、オナニーを知り、反抗期を迎え、セックスの喜びを覚え、本を読んで学び、世界の残酷さに絶望しながらも、ニヒリズムには支配されず、自身の思考と行動を通じて本当の自由を手に入れようとする。クライマックスのクリトリスの切除は、女性の性やオーガズムを否定する行為で(当時のキリスト教社会では自慰や婚前交渉は禁忌であり、女性には性欲がないと考えられていた訳で)、女性は子供を産む機械であり、征服すべき領土とでも言うような、特にベラにとっては最も忌むべき行為だった。ラストでヴァギナを手に入れる「バービー」と、ラストでクリトリスを切除されそうになる「哀れなるものたち」がアカデミー賞で対決するのはとても象徴的。エマ・ストーンが『女王陛下のお気に入り』の形勢逆転シーンで提案したというヌードシーンも、男性の欲望のためではなく、女性の主体性と戦略性を感じさせるものだった。哀れなるものたちとは何のことなのか。やはりここでもヨルゴスランティモスの人間を動物のように扱うことへの怒りが垣間見える。幻想的でシュルレアリスティックな映像、実験音楽、ユニークで美しい衣装、俳優のメイク、どれもがヘンテコで目にも楽しくて、頭も楽しくて、笑えて、冒険のわくわくがあって、オシャレで爽快で大好き。
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