ツヨシ

哀れなるものたちのツヨシのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画はとても良かったです。ただ、個人的には全然好きではありませんでした。それなのに良い映画だったと思わせてくれる魅力があったんだと思います。

映画の色彩がとても素敵でした。衣装も建物も、空の色もとてもカラフルで、ファンタジーの世界みたいでした。
ですが、映画が始まってからしばらくはモノクロで描かれていました。主人公ベラにとっての世界の見え方というか、視野の広さを表していたんだと思います。モノクロの世界に色を与えたきっかけは、冒険に出たことと性行為だったのだけれど、性的快感のインパクトの描かれ方が直接的すぎて直視できませんでした。

赤子として生まれ変わっていたベラは、性的快感を覚えた時すでに、大人として機能する生殖器官を持っていてしまったわけですが、それを悪用する男たちがとても気持ち悪かったです。
人間の根源的な欲望が性的なものであることは同意するのですが、まざまざとそれをスクリーンに映し出され、自分の理性が逆撫でされたような嫌悪感を覚えました。

何よりも生理的に受け付けなかったのは倫理観です。フィクションなのでそんなことにケチをつけるなよというのは自分でも思いますが。
天才外科医が自殺した妊婦の腹から胎児を摘出し、胎児の脳を母に移植するという、この映画の主人公であるベラが誕生する前提を全然受け入れられませんでした。
知的障がい者のようにベラを見てしまう自分の差別意識に呆れたのと、倫理的な生理的嫌悪が邪魔をして映画に集中しきることができませんでした。自分の精神的弱さだと思います。
成長したベラは、自分を新しく創造した外科的手術を行ったゴッドたちを一度は”モンスター”と揶揄しますが、結局ヴィクトリアであった時の元夫である将軍にも同じことをしているのが悲しかったです。これは自分の理想通りにストーリーが進まなかったしょうもないわがままなので、論理的な意見でもなんでもないです。

自分の弱さゆえに楽しみきれませんでしたが、映画が素晴らしいものであることはなんとなくだけれど理解できます。出演された方は演技が難しいシーンが多かったと思います。本当に俳優さんってすごいんだなと思いました。
ツヨシ

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