のびのびナード

哀れなるものたちののびのびナードのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.8
巷では「悪い子版Barbie」と呼ばれていたがなかなかに言い得て妙。確かにアッチは人形の(理想的な)物語で、コッチは人間の(より現実的な)物語だ。
あっという間、欠伸なしの2時間半だった。それは奇抜な衣装や色彩豊かな世界観の目新しさによるものでもあるが、そことは対照的に取り扱っているテーマが人間の根源的なものだからだろう。もしかしたら次のシーンで長年悩まされているその重大な問題に対する解決策がベラから提示されるのかと思うと目が離せなくなるのだ。あと父性が急発達する。途中のキスには何も思わないが、最後のキスには泣いた。俺たちのベラよ、幸せになってくれ。
人間の成長をベラを通して擬似的に見せることによって、人間がどれだけ矛盾の孕んだ生き物なのかよく分かる。多分まだ精神年齢が幼いであろうベラがダンカンに向かって「この複雑な感情が理解できない」と言ったが大人だってみんなそうだ。ただそれを“哲学”という古くから伝わる知識やマーサという老婆の教えから紐解こうとするベラとそれらを海に投げ捨て(ようとす)るダンカンの構図は大人になりきれない大人な自分にはすごく突き刺さる。人間、自己成長あるのみなのだ。
今作で終始語られる通り、自らの肉体、精神、そしてその周りの世界は誰のものでもなく正真正銘自分のものであり、お前が消えて喜ぶものにお前のオールを任せてはならないし、生殺与奪の権を人に握らせてはならないのだが、今作はそんな近年では語り尽くされた結論には止まっていない。その肉体と精神を使って世界をどう変えたいのかを今作では問われている。昨今、なぜか肉体と精神が自由に変更できる世の中になってきているが、果たしてその行動は世界を“向上”させられるものなのだろうか。仕事柄、流行り廃りを語られがちな業界に属しているがそういった自分だけが得をする表層的な選択が自分の周りの世界を壊しているということに気づいているのだろうか。どんなものを捨てて、どんなものを拾おうが個人の勝手だが世界に関しては自分のものでありつつもみんなのものでもあることを忘れてはならない。人は人を、時には自分自身をも殺すことができるし、逆に生かすこともできるのだ。
ただ、この作品をフェミだの家父長制だので語るのはもう古いと思う。女性は少し前から余裕で偉い奴を(社会的に)倒せるようになっているし、男性にだって上品なヤツもいれば下品なヤツもいるし、ヤギみたいになるヤツだっている。地獄のモンスターは男女両方の股に付いていて、SEXは基本2人でするものなのだ。男女で区別して語ろうとしがちなジジババはf⚪︎ckで🤚🏻
のびのびナード

のびのびナード