垂直落下式サミング

哀れなるものたちの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
社会性のあるテーマと、歪んだ世界観のアート性に、僕ごときが語る言葉なんてないのではないかと尻込みしてしまったけれど、よくある「男と女」のはなしとして、自分事に近いところにまで落としてみると、なんとなく咀嚼することができた。
かくいうワタシは、相も変わらず時代に取り残されているようで、いまだにフェミニンな感性が皆無であるから、こういうオンナにはまっちゃうと後が不幸だなって、振り回される男たちの悲喜劇のほうに目がいってしまう。
ベラ・バクスター女史は、こちら側を「オマエ抜きじゃ無理!」って状態にしてからポイっと捨てて突き放すタイプ。無自覚にこれをやるオンナがいるから、一定数の男は後付けの女性蔑視的感性を搭載しているだと思うのです。僕らはいつから女を憎むようになったのか?ミソジニーは誰のせい?どうなんでしょう。鶏が先か卵が先かってなもんですが…。
あちらさんは、だってお互い最初から遊びのつもりだったんだから、私たち軽いカンケイでショ?って悪気なく言い捨てる。ホンキになっちゃったの?ええ…、マジ…、ダサ…、蛙化…。いや、立場が逆ならわかるんです。そうなんだけどさぁ…。傷の癒えが遅い独身貴族な中年になってから、精神に大失恋デバフ抱えるのはキツいと思うんだよなあ…。
でも、マーク・ラファロとふたりでヘンテコなダンスをするシーンは、すっげえ楽しそうで幸せに溢れていた気がする。熱烈ジャンプなみに、ふたりのあいだに愛があった時間のいい思い出ではあるんじゃないかしら。
男のダメさを詰め込んだみたいな性格のキャラクターを請け負うマーク・ラファロ。女性の観客は元カレとかを重ねるのかもしれない。ちっさくて、女々しくて、粘着質で、そのくせいい格好しいで、マジご免なさいって感じでした。彼とドクターの初対面の会話が印象に残った。おしっこ近い人は前立腺癌かもだから健診を受けたまえ。身になる知識を得たり。
もうひとつ印象的だったのは、リスボンのでかい水槽に白黒の縞模様のやつが群れで飼われてるところ。ベラは興味津々だけど、男はあんまり関心がない。ツノダシは、いい熱帯魚だよね。カタチが好き。お魚さんは稚魚から成魚になると、姿形がまったく変わるのでギョざいます。拙い言葉遣いが可愛らしかった女の子も、今ではすっかりインテリで多情。オトナになった彼女の色彩を愛しなさい。ちっちゃくて無色透明よりも、色鮮やかなほうがお好きでございますでしょ?
うーん…、やっぱ僕の感想は的を盛大に外してる。そもそも「男と女」のはなしじゃないですね。「女と男」のおはなしだったんじゃないかな。