文園そら

哀れなるものたちの文園そらのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

哀れなるものは誰か。

今年これ以上の映画ってないんじゃねーの?(n回目)
年齢制限について。本作はR18である。予告を見た時点では「なんで?」と思っていたが、本編を見ると納得である。内臓が映るシーンもあるし、セックスシーンもたくさんある。ベラは別に「性的なことはタブー」だとは誰にも教えられていない。というか性に限らず、良くも悪くも常識や良識、偏見や差別とは無縁の存在だったのだ(当然これから知ることになるが)。初めてオナニーした日の朝、ベラはメイドに嬉々として話しかける。「ベラ幸せになる方法見つけた。教えてあげる、簡単」と。メイドの股を触って案の定叱られるわけだ。しょーがねえだろ子供なんだから。
では本作はエログロだけの奇妙な映画かと言うとそうではない(奇妙ではある)し、そこがアピールポイントでもない。もしそうだったら予告時点でエログロを押し出しているはずだし、本作のメッセージはもっと文学的なところにあると思う。それに、断じて本作に年齢制限は必要だと言わせてもらう。地上波向けや全年齢にした瞬間に、本作の魅力もメッセージ性も半減するだろう。
ベラは常に「進歩」「成長」を求めている。例え考え方が変わったり何かに飽きてきても、進歩は止まらない。終盤、知識も考えも成長したベラがマックスと散歩するとき、マックスは自立しきったベラを受け入れ、「男も女も進歩している方が良い(べき、だったか)」と言う。最初から最後までベラと対等に会話したのは、マックスや、船で出会った老婆くらいじゃないだろうか。
ベラは子供のスポンジのような脳みそで周囲からどんどん吸収して成長していくわけだが、実は、周りの人々もベラに影響され変化していくのだ。その中で、変わる者、変わらない者、尊敬する者、罵倒や支配しようとする者、様々だ。ゴッドウィン博士は考えを改め、ベラに隠してきた誕生の全てを話し謝罪する。
どんどん知的になっていくベラに「お前の可愛い喋り方が失われていく」と嘆くダンカンの、いかに可哀想なことか。愛する人の成長が嬉しくないのか? ならばそれは愛ではなく、執着や支配欲だろう。
本作、少しでも気になっているならオススメだ。なんにせよ、どのような面白く素晴らしい感想も、本編そのものを超えることは出来ない。
文園そら

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