はるこ

シチリア・サマーのはるこのレビュー・感想・評価

シチリア・サマー(2022年製作の映画)
4.1
もっとキラキラした恋愛模様を描いた作品だと思っていましたが、予想外の結末にエンドロールに入っても放心状態で空いた口が塞がりませんでした。

長閑なシチリアの田舎町での出来事。
ゲイであることで周りから揶揄われて居場所のないジャンニはバイク事故で花火職人の息子であるニーノに出会う。

狩猟を嗜むことは男らしさの象徴として描かれているのでしょうか。
前半はシチリアの乾いた夏の空気に包まれて2人の距離が近づいていく様を時間をかけて描いている。後半から流れは一変し、ジャンニのことを最初は手厚くもてなしていたニーノの家族だが、彼がゲイと分かった途端に手のひら返しで変態扱い、嫌悪の対象とする。

許されないなら秘め事にしてしまえばいい。
身内だからと言って全てを正直に打ち明ける必要はない。
ジャンニを迎えにいくニーノ。
W杯優勝に沸く人々の波に逆らい逃避する2人の姿は小さな田舎町の中ではマイノリティそのもの。

観た後でわかる。
前半は正直退屈に感じていたのでこんなにスコア上げる気は無かったけど、“田舎” “狩猟” “W杯” これらの要素をうまいことストーリーに落とし込んでいて、その前半の冗長さがあったからこそ2人の迎える結末がより衝撃的に映ったのかもしれない。
映画としての完成度も非常に高い作品だった。
現実は小説より奇なりとは言いますがなんて皮肉の効いたラスト。
2人は“ウサギ”のようにか弱い存在なのに。
悲劇としては120点満点の結末ですが、これが現実に起こったことだとしばらく受け止められずじわじわと心が締めつけられる。

今がマイノリティの方々にとって少しでも自分らしく生きれる世の中になっていることを願うばかりです。
はるこ

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