いつもいっちゃん

シチリア・サマーのいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

シチリア・サマー(2022年製作の映画)
4.7
同性愛がありえないこととされた時代のイタリア、シチリア島での少年達のラブストーリー。

人間の環境を丁寧に描写できているだけに、より小さいコミュニティでの生きづらさが描かれている。
その状況だからこそ、二人の連帯と求め合う気持ちは抑えられない。
確実に起こる痛ましい出来事に対し、そこに向かうまでの幸福感も受難も映し出される。
大の大人から疎外されるジャンニと、奔放なニーノ。
家族のそれぞれの在り方が違い、それぞれに抱えている。
家族でさえ、二人の関係性を知った瞬間に理解ができないししようともしない。
けれども何気ない二人のひと夏がかけがえないものとして映る。
家族のコミュニティから二人だけの世界を求めたことに対する一瞬のラスト。
衝撃的であり、その瞬間ごとが記憶に残るような作品。
実話を基に語られた作品だからこそやはり気持ちが抉られる。
しかし、作品で映される家族や周囲の反応は間違いなく存在する。
海だけが知るはずだった関係性。
もっと映っていなかった瞬間に2人の大事な瞬間があったのではないかと思いを巡らせずにはいられない作品でした。
LGBTに理解が進んだ表現が近年多い中、こういった過去をちゃんと刻んだ作品もやはり必要と感じてしまう。
辛いけど観て良かった。
受け入れられない感情って何だろう。