にく

動物界のにくのレビュー・感想・評価

動物界(2023年製作の映画)
4.9
T・カイエ『動物界』(23)。原題“Le règne animal”は生物学(分類学)上の用語なので邦題は全く以て正しい。ただ内容からは「動物の支配する世界(王国)」の到来という含意を見て取れる。「人間」から「動物」、「言語」から「叫び」へ。「想像界」への消極的退行ではなく「現実界」への積極的逃走を描く。
 これは思春期を迎えた息子の出立を描く寓話だ。母親も既に「動物界」に去っており、「父(夫)」だけが(「象徴界」の様な)そこに残される。かつて母子が大自然を前に言葉を失っているとき、父はメカニカルな機構を「サブライム(崇高)」と形容した。息子はそんな「男」にはならないと笑い、巣立って行く。
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