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夜の外側 イタリアを震撼させた55日間/夜のロケーションのニューランドのレビュー・感想・評価

4.1
✔️🔸『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』(4.1) 及び🔸『仔像は死んだ』(4.1)▶️▶️

 昨年の映画祭で多方面からイチオシだったが1回の上映しかなく、それも1ヶ月前位の告知、当然そんなに急に休みなど取れる筈もなく残念だったが、奇特ななザジが買い付けたので、逃した魚感で珍しくロードショーで見に行く。5時間半というと渾身の大作かと思うと、TV用の作の6話、を繋げたからそうなっただけみたいで、がしかし描きたい何かは余す事なく描きつくして、それ以上に映画を抜けた膨らみブレを伝え拡げ、結果代表作の1本ともなったは感じるが、その後安部公房監督作を2本観るつもりで、時間を勘違いしててこの1本しか観れなかった、演劇をほぼまんま安っぽくビデオ化した(西武作)『仔像~』の方が、1時間もなくも、まさに渾身の傑作を感ず、というアイロニーも。しかし、どちらも立派だし、しっかり毒や格もある。
 6話構成のグチャグチャの人間喜劇の様相。喜劇にもなってない懐ろだが、しっかりおっとりダメ押しペースで、余しなく描き上げるので、骨太の味わいと手応えの深い作となってる。得体の知れない衝撃を通過してく感も続く。モロ首相の赤い旅団による誘拐殺害事件は、当時からニュース無縁の私でもかなり強烈に焼き付いてる。6話構成は、最終話の纏めを除き、同じ時間を何度も行き来繰返しながら、1人ずつをメインにその困惑混乱を多角的に描いてく。①キリスト教民主党党首モロ②内務大臣③教皇④赤い旅団の女戦士⑤モロ夫人⑥。わりと平均的に緊密で強い⑤を除いては、基本の単純さの持つ訴求力と一気アクション連なり極めとドーンドーンと高める音響で、押してカット間の段差を敢えて出してる。
 30年も政権を担ってきた、キリスト教民主党を、共産党とも連立の一体国体で、政権の延命を穏和に乗り切ろうとしている、党首モロは、子や孫にも気を遣う、小振りな家庭へも細やかに和まし扱ってた~只妻の反応は切れてる。大学でも教鞭を取ってるが学生外新左翼も入り込みもすることも。反ブルジョワ・ファシストを唱え、民衆はなびかず、若者は「赤い旅団」指示多の声も。党内の反共の反発も大きいまま。新首相初陣議会に向かう1978年3月、「赤い旅団」による車襲撃、護衛ら射殺の誘拐が起こる。政治犯釈放らの声明要求にも、政府は国威第一の線引きでなかなか応ぜず、モロは弱気に狂い、国より我が身で政界には無用の死に体、既に実際死亡とか救出の価値無しと、流してく。少し前の類似誘拐事件が惨劇化しなかった事からの高を括った面も。只1人、自分の家庭が冷ややかな事から、殊更民意の細かい不和にも反応してしまう、内務大臣だけは、諜報や秘密警察、国内電信傍受、占いまで、あらゆる目配せを絶やさず、可笑しく無駄も多い迄に救出解放に尽力。アカは拒むばかりのアメリカの意向も受け入れなければならない。また、聖下こと教皇も、友の救出に気を揉む、同じく無駄にアタフタの姿。教会と相互に妙に入りくんでる政権政党寄りの、解放依頼声明も持ち込まれるも、古びた語りを心配、他の司教への依頼も考える。教徒全体が優先し、心痛める個に向かいきれない。共産党や社会党の反応も我が身の保全を越えない。
 そしてまた、旅団内でも上からの命令に従う一方通行に、このまま党首を射殺すると、政府を揺るがす事にはならない・寧ろ意に沿う事(無意味英雄化へ)、解放してこそ、敵の屋台骨を崩すとの意見が下から。娘も母に託して革命に身を捧ぐ女革命家も、旅団の上の堅さに不満が高まってる。秘密裏交渉を公にしてダメージを狙う事も、社会ルール、義や信に反すと感ず。
 嘗ての夫婦愛を失くしてると思ってたモロの妻も、新婚に戻ったような夫の手紙に、動かない政府抜きに、気丈に動き、判断に慎重大胆を期す。夫の幻と共闘し、いつもは妥協だらけの政党の豹変に憤る。夫は狂ってない、生きてる、を貫く。政府が見限った夫の手紙の細やかな真意に反応し、見かけたとの民間情報にも傾ける熱意。が、それは内的真実を企てる演劇的試みだった。
 誘拐から、2ヶ月近く。旅団への民衆の支持は離れ、政府も含め、それぞれが独走し、首相や書記長も形だけの振る舞いを続けてた。その中に、不思議な光景の感覚が拡がる。モロは解放され、旅団への恩赦や謝礼も述べる。その光景は、作品プロローグの断片に一致呼応する。それは麻痺してきた人々の底の願いだったのか、先の演劇的な真実か魔力の作品占拠だったのか。セットの解体も試みられる。モロは死体で発見され、遺族だけの葬儀が営まれ、国葬に棺はなかった。次期大統領候補だった男はなくなったが、書記長総理大臣内務大臣らは延命し、後の2人は大統領にもなった。旅団は内部分解してく。
 語る主体が代わる毎に時制行き来、回想や幻視・(共同)幻想・実験演劇要素、が自在に介入するせいでもあるまいが、基本タッチは鈍重なものになってて、寄りや90°変、どんでん、リヴァース、寄るやフォローや視界揺れら移動、縦の構図や俯瞰め、等が滑らかさより段差の尾いてかなさ名残を見せて進み、揺れもする望遠カットや窓枠図らはグリーンやブラウンがかり異世界半絵画風にも、そこでもある段差を示す。暗めと赤染めめの素早いカッティングも。一気呵成一斉多角射撃の簡潔越える力や・国旗の巻き付きや伸ばし拘りらの絞り込み造型力各所。そして過大な音楽・音響がシーンをニュアンス消して纏めきる。全体にくすんだトーンで、これらは初期のTVや映画の原始的力。ススッと進み、纏まる時はいいが、全体にオロオロ、あちこち行戻り速く、が捉え込まれる。ただ、⑤の急な不自然も愛の戻り確信下だけでは、都合や体面外し、着実にフォローから指示伝え絡みから、段差ない一体力学の自然を見せ、積んでく。正しさよりも核に突き当たる可能性を共有もさせるが、広さからつまづき、全てはまた緩む。
 含みや普遍のある、巨大な喜劇として描く事自体が、この大事件への挑戦なのかも分からない。ベロッキオは、近年題材的にも似てきた伊系のスコセッシと比べても、歴史や映画への姿勢がより本格の凄みがあるが、2人よりは遥かに劣る技巧だけに長けたタランティーノでも(あまり成功とは言えずも)出来た、ヒトラーやテートなどについての歴史改変眩惑ゲームを、より徹底、TV的でなく本来の映画的偏執狂的しつこさで、やり抜いて欲しかった気もする。
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 『仔象~』。安部公房のスタジオの演劇をまんま収めてるが、TVビデオの手法や、舞台周辺、屋外まで入れたのは、メディアへの目配せで従属してるわけではなく、演劇の舞台に縛られない独立を、柔らかくも完全に宣言してるのかも知れない。夢は終らない、を継続よりも分断を入れる弾みの繰り返しとして入れ、舞踏の軽やかさと、全てを膨れさせまた引き入れて沈下させる、広く何枚も重なって床の多くを覆う白布と重なる、夢の(夢の)中の、魚や象、への変身や希求。布の内からのライトや劇場照明、素材ビデオ自体のネガ反転や色相変換、背景の映像との合成や、その破れ作り、その奥のまた映像。舞台を囲む天井枠組みから手前のTVモニター迄、階段や足場を追いかけ回り、通り迄出る。真仰角からアップやパン迄、カッティングも気負わず、平均的で主張はない。床下からの蛇口アップ迄、この後語る無人格なタイツらキャラらについても、キャラアップ寄り入れや舞踏追い止め的へのパン、ズームや絡みの揺れパン揺れらも、丁寧すぎず拘り意固地なく、微かに柔らかく優しいスタイル。白塗りの顔に色筆で描き合うタイツの男ら絡み、バレリーナより跳びまくる男、モモンガみたいなタイツで形の動きを揃え合う連中、中に何人か肩に乗せてるのか超長身の凍った加尾の仮面人ら、外界から舞台まで泳ぐように追い求めるジャケット男、其々が入れ替わり対峙しバランスを動かし、白いシーツ下の存在を探しては、互いをシーツ下に戻し無化してく、細かいうねりが収まらんとする度に終らぬ夢を宣す、唯一創造神に近いような女は、抜けられないような人らの手の囲みから逃れられず、床下に消されてく。残り膨れ上がる布の形状が、求めても無理と理解の、象ともみえてくる。
 役者も演出も映像も形状も、焼き付き残る事はない。何かへのプロテストではない、夢と呼ばれ、定着連関しない、自由と可能性だけが、感じ取れない美として、只しかし信念に至らない・心の届かない、具体への欲望が呼吸の先をみてゆく。美しく儚く、だが存在せんと自由にはばたいてく。完全な何かに触れている。「弱者への愛に存する殺意」の字幕で締める。
 井川のステージ物も見たくて、チケットを求めたら、もう終わりです、と時間を丸一時間間違えてて、無理だった。





【以下は誤送信時の、後に消去する予定の前後編メモだけのもの。書き漏れ気になるので暫く残す】

聖下、内務大臣、総理大臣、党首、赤い旅団騙り。学者、予言、秘密警察、傍受者、現場調べ

ドーンら音響効果、暗赤早転換、望遠と向こう別同感、緑や茶汚しリアル粗画面。国旗巻き付き。フォローと視界揺れ移動。90

39年の退廃、共産党も含め一帯団結、社会党滅ぼしも、死んだばかりかもう政界無力、国威第一、冷徹、国より我が身、妻寝てくれん、国民の声を、より自由な君が、直に語りかけ、ファシストとブルジョア、民はなびいてない、若は旅団指示、身体に障る、よく十字かを背負い、交換条件、獄中解放、留意生きてる、アメリカはアカはアカで難しい、教徒全部と個、秘密裏に会話ルートだがもう公開のものしか、

秘密裏、ルールも義も信も。皆殺すことに。戻す事が逆転勝利。愛がない。妥協の党。芝居。恩赦、謝礼。大統領に。狂い扱い。まだ生きてる。目撃、相手にも。子どもとも別れ。旅団撤退。棺なき国葬。
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