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ガルギ 正義の女神のくりふのレビュー・感想・評価

ガルギ 正義の女神(2022年製作の映画)
4.0
【骨の髄までレイプ大国】

IDE2023の上映にて。2022年のタミル映画で、性犯罪の被害とその波紋をブラックに追う。

この“胸糞”ラストは、インドの現実感が反映したものかと。それだけヒドイってことで、安易な救いを混ぜてお茶を濁すべきじゃない、と制作側…特に女性は、判断したのかと。

インド映画は、タイトルに名を冠した主人公を事件に投入する展開が目につくが、本作は自身もかつて性被害に遭い、今は子供たちに、真摯に教えている女性教師の物語。

しかしガルギは一夜にして、性犯罪の加害者家族に仕立てられてしまう。全方位から緻密に紡がれはしないが、彼女の葛藤物語としては引き込む力抜群で、とても見応えがあります。

例によってマヌケな警察も、インド映画にしてはキチンと捜査している方かと。ガルギを助ける弁護士は、立体感が薄くちょち残念なキャラですが、あそこまで頑張ってくれればね!

トランスジェンダーか?と噂される判事が、映画に“多様な視点を込めた一本の芯”を通しており、すこし単純な人物像だけど、本作の成果だと思いました。

で、要の容疑者は…最後まで心の皮を剥かないからモヤるんだけど、ソレ系の事件でかつて騒がれた、某映画監督と風貌が近いのが伏線になってしまい、笑うに笑えませんでした…。

ガルギ役のサイ・パラヴィさんは、いい女優だ!ノーメイクかは知りませんが、素顔風でちゃんと魅力を醸し、平温で熱演している。『不徳のアンソロジー』でも、女性差別に苦しむ役でしたね。で、本作では共同脚本も兼ねていると知って驚き!今後も楽しみです。

マスコミはごはんに集るハエみたいな扱いで、『アムー』が良かったアイシュワリヤー・レクシュミさんは女優力発揮とはならなかったが、華は添えています。彼女も、プロデューサーを兼ねているんですね。実際、女性の力が込められた映画だと、ハッキリ伝わります。

今後もタミル映画に、知性と凄みを備えた作品が増えるのでしょう。楽しみにしています。

<2023.6.22記>
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