このレビューはネタバレを含みます
『月光の囁き』が結構好きだったので鑑賞。この時代において、女性の扱い方や個人の性的な趣味思考をここまで丁寧に描いていることが逆にすごいし、そこはそこまで気にならないくらいに愛について物語られていてやっぱり面白かった。
春画を通して、先生と編集者、ヒロインの関係性が描かれていく。その中で、先生の前の亡き奥さんや、その姉が絡んできて、リアルじゃないがその関係性に説得力があって物語として面白かった。また、誰も悪くなく、みんな魅力的な人物像で描かれていたのも最高だった。脇を固める柄本佑と安達祐実は素晴らしかった。
主人公はカフェで働いていたが、その際、地震にあったことでその側で春画を見ていた先生と会話し、春画の魅力にのめり込んでいく。その内に先生にも惹かれていくが、先生には忘れられない奥さんがいて、そのことを編集者から聞き、なんとか自分に振り向いてもらえるように奔走する。
まず、ヒロインの主人公の変貌っぷりが見ていて気持ちがいい。自分の好きなものに真っ直ぐにぶつかっていくさまがとても良かった。走っているイメージがとても印象に残っているが、その疾走感が良い。
また、これは歴とした純愛の物語で、本当の愛ってどんな相手であっても自分が愛したいから愛すし、そのためなら自分はどこまでも変われるような気がする。その変化の過程がとても丁寧でよかった。人といることで発生する自分の知らない自分、それが好きな自分であればすごく良いし、それが人との関わりの中でとても素敵で大切なことだと思う。本作はそれが割と性的な方向性で描かれているが、それはその人の趣味嗜好や人間性の誇張であって、多かれ少なかれ愛を求めるとこうなるのではないかと思った。そんな真っ向から相手に向き合い、愛することの素晴らしさがすごく強く伝わってきてすごくよかった。
この普遍的なテーマを春画を絡めて奇妙な人間関係で描けるのは面白いし、展開も読めないから終始ワクワクできた。エンタメと人生の真理が上手く絡まっていて観終わった後とてもスッキリして暖かい気持ちになった。
やっぱり女性が魅力的な映画は良い映画が多い気がする。
