ヨダセアSeaYoda

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

3.9
【STORY】
 ハロウィンの日。探偵業を引退していたポアロを、旧知の作家が"とある降霊会"に誘い出す。
 その屋敷には、昔ペストの子供たちが死んだという不吉な伝承、そして近年屋敷の主人の娘が死んだという悲劇も起きていた…。

【REVIEW】
 『アイ・オリジンズ』然り『エミリー・ローズ』然り、理論派の主人公が神秘的な現象との間で揺れる作品はやっぱり面白い。
 神秘系の演出を印象的に挟みつつ、それがメインであるミステリーの軸をブレさせることはないバランス感覚が今作独自の芯になっている。

 そして、シリーズ3作目にしてケネス・ブラナーの監督としての世界観作りと、俳優としての最高のポアロっぷり、その両方が完全に板についてきたように思えた。

 舞台が1947年のベネチアということ、そしてアガサ・クリスティの名著の映画化ということもあってか、今作の世界観・雰囲気作りには徹底したあるこだわりを感じる。

 録音のソフトな感じは1947年らしいレトロ感を演出。
 撮影も基本的には "引き算" かつ定点ショットが多く、ミステリーに重要な "会話" のシーンでは登場人物の顔を見ながらセリフを聞くことに集中させられるアップな撮影を徹底する代わりに、転換やセリフの繋ぎ目ではベネチアらしいゴージャスで由緒正しい風格のあるお屋敷セットを一望できるようなカットをたびたび挟んでいる。
 そして印象的な場面でだけ素早い回転カット(衝撃的に"神秘"に振り回されるシーン)や、ドローンショット(主人公ポアロの今後を予期させるシーン)で効果的に使う。好みすぎる撮影だった。

 ケネスの知的紳士だけど好奇心を隠せないポアロっぷりはもう安定。
 さらにティナ・フェイ演じる高慢な作家オリヴァも、ミシェル・ヨーが確かな実力を見せる霊媒師レイノルズも、ノリで生きてそうな若者にぴったりのカイル・アレンも皆印象に残った。
 あと、監督過去作『ベルファスト』でお気に入りになったのか、ジェイミー・ドーナンをボディガード役としてキャスティングしているのもある期待を感じさせる。

 聖書系の要素は機能しているとはいえ本編の大筋からは全カットしても問題ない部分だけど、やっぱりそれを入れるとおしゃれで知的な雰囲気になるよね。

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