べるまちゃん

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のべるまちゃんのレビュー・感想・評価

3.9
前作がアガサクリスティー強火オタクとしては絶許な出来栄えだったので1ミリも期待せずに観に行ったのですが、これがびっくり、ダークでホラーなミステリーに仕上がっていてなかなか見応えがあったのですよ。そんでもって原作から1ミリどころか10億kmくらい(?)改変されてて、もはや別モノ状態になっていてさらにびっくらこいたのですよ。なにこれ。せいぜいインスパイアされましたくらいのレベル。でも冒頭に書いたように、ホラーとしての出来栄えはなかなか素晴らしいのでいいでしょう。

なんといってもベネチアを舞台にすれば雰囲気ってもんは出るんですよね。空撮なんかため息もの。アカデミア橋は本当に絶景。そして綺麗なだけじゃなくて、あの滅びゆく街独特のじめ〜っとした不気味さが前面に出ていたのがまたよかったんだ(それに頼りすぎな感じは否めなかったけど)。物語は終始夜なので、ミステリでありがちな「外界と遮断された、恐怖の一夜」を観客も疑似体験でき、いい意味で怖さ倍増、雰囲気ましましだった。
(でも、今年ベネチアに行ったばかりだったので、ポアロがトイレに篭るシーンで、あー下水臭いんだろうなとか思ってしまった)

ていうかケネス・ブラナーはポアロでこういうのこそやりたかったでしょ?前2作はこれ撮るための布石だったのかなと、今思うと。
アガサは作家人生を進めていくにつれて人の中に巣食うEvilを追及するようになっていくので、個人的にはそっち方面に舵をとって欲しいんだけど、ブラナー的にはポアロのダークネスを掘り下げたいんだよねきっと。ブラナー的ポアロの解釈にとてつもなく熱い思いを感じる(感じるだけで共感するとは言っていない)。ブラナーさんそれってね、オタクの二次創作だよ……。

そういえば私の大好きな『若草の頃』が小道具になっていたのがなんか嬉しかった。セントルイスで会いましょう、だね。

以下ネタバレ














オリヴァ夫人に対してのあの一連の発言は、アガサ強火オタク的にはダメです!!!