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大いなる勇者のmasatのレビュー・感想・評価

大いなる勇者(1972年製作の映画)
3.9
「こういうのはどうだろう?一層のことさ、アメリカ人をやめるというのは?」
「ボブ、イイね!」
かくして、本作は始まった、かどうかは知らない。
アメリカン・ニューシネマが発動して丸5年が過ぎた頃、そのトップバッターの美しき男が、今までのそれら映画と、自分自身を打ち破りたいと、のちの盟友監督と共に挑んだ、アメリカ人を捨てるアメリカ人の話。

狙いは的確。
死を持って、ハイウェイを爆走するのではなく、全く正反対の大自然へと対峙し、伝統芸の西部劇の枠組みをも凌駕し、1950年代の大自然の中に、今のアメリカの姿と進むべき道を浮き彫りにした。

最もヴィヴィッドだった頃の監督シドニー・ポラックとレッドフォードの初顔合わせは、いま観ても鮮烈。
『ひとりぼっちの青春』(69)と『明日に向かって撃て!』(69)で、それぞれアメリカン・ニューシネマの流行りに乗った二人の渾身のその先へと漲る渇望。

40年ほど前、日曜洋画劇場で観た時には、なんて怖い作品だろうかと思った。
この世から孤立し、たった一人で自然と向き合う怖さ。まったく言うことを聞かない大自然への畏怖と孤独感、そんな流れを怯える様に子供の自分は観たが、その恐ろしさは、この凍てつく映像に、古びれることなく、今も荒々しく攻めてきた。
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