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ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択のmasatのネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

味気ない!
きっと、日常なんて、味気ない連続なのだ。
そして、ケリー・ライカート、『ショーイング・アップ』(23)に続き2本目だが、彼女の特徴はこの点の様だ・・・
“味気ない”。
そこが、アメリカ・インディペンデントの“至宝”と呼ばれる理由であろう。

モンタナの広い大地のワンショットがトップカット。彼方から列車が走ってくる。アバンが重なり、その列車の音が冒頭の“音楽”である。
そして次に、地味な街の全景に重なるテレビ(ラジオ?)から聞こえてくる声。
「厚い雲の隙間から太陽がのぞくでしょう。しかし日差しというより、かすんだ光といった程度で、気温上昇は望めません・・・」
これが、この映画のテーマだと言う事が、徐々に解ってくる。そう簡単に太陽は、光は、照らしてはくれない。しかし、
クライマックスでは、かすんだ光が、薄らと射し始めているのだ。

この映画に登場する、メインの3人の女性は、(敢えて言うが)何の接点もない。
共通点は、“光射す方へ”向かっている、と言う事。

モンタナの小さな街で暮らす3人の女性の話が順番に折目正しく語られていく・・・やがて、『ショートカッツ』『マグノリア』日本で言うと『ゾッキ』『リボルバー』の様に、奇妙な“接点”を発し、もしくは、一つに“結びつく”・・・そんな訳はない!
そんな虫の良い話は、日常には転がっていないのだ。
そこが、味気なさの極地なのだが、その正直さのぶつけ方が、より真実味を増して、愛らしく思えてくるから不思議であり、これがライカート・マジックなのだろう。
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