TaiRa

絞殺魔のTaiRaのレビュー・感想・評価

絞殺魔(1968年製作の映画)
5.0
10年ぶりくらいに観直したら面白過ぎて感動。

画面分割の連打で画的には派手な印象だけど、語り口はめちゃくちゃクールでドライなのが良い。ほとんど音楽も使わないし淡々としてるのが何より暴力的で怖い。そこが一番黒沢清っぽい。遺体発見の場面で日常と非日常が同時進行で描かれ、画面は分割されてるのに(だからこそ?)シームレスに接続されているのがヤバい。創作のミステリと違って実録犯罪映画だから警察が空振りしまくる。基本的に警察が何も出来ない無力感、続々出て来る被害者。被害者が老女だけだったのが、次第に少女も殺され始めて切迫感増すのも上手い。フィンチャーの殺人鬼映画って基本これやりたいんだろうな。犯人が勝手に出て来ちゃうし。空振りのバリエーションも無駄に豊富で、あらゆるパターンを出して来る。街中の変態を一斉検挙するシークエンスの豪華な画面分割が最高。撮影量が地味に多い。基本的にシリアスなのに超能力者登場とかユーモアもちゃんとある。ヘンリー・フォンダの見え方の変化とかも流石だった。第三幕で急に犯人が主人公になる構成もカッコいい。病院のエレベーターで偶然犯人と乗り合わせたフォンダとジョージ・ケネディが黙って車まで向かうとこが生々しくて最高。『その男、凶暴につき』でたけしが急に踵を返して走り出すとこ思い出す。タイムラグのリアリズム。クライマックスの取り調べで犯人よりフォンダの方がグロテスクな人間に見える構図も良い。ラスト周辺はトニー・カーティスの芝居が素晴らしくて、長回しで芝居を撮る事のお手本みたいなシーンになってる。
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