ヤッスン

違国日記のヤッスンのネタバレレビュー・内容・結末

違国日記(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

人と100%分かりあえることはまずあり得ない、
特に2時間程度の映画の中で観客はその登場人物を100%は理解できない、
みたいなことは常々考えているけど、
その「100%でない」ことを悲観的にとらえず、それでも心地の良い大切な存在になれるという優しい映画だった。

W主演な印象が最初は強かったけれど、蓋を開けてみれば間違いなくこれは朝の物語だ。
両親を失い、その感情に名前も付けられぬまま、さらに伯母に引き取られ名前のない関係性となる。
明るく元気に過ごす(過ごしたい)中で、どこかに喪失感や寂しさが残っていることにふと気づくような演出が細かくあるのが良かった。
それゆえに「誰も自分のことが一番でない」と徐々に感じだす流れを感じ取れる。

もう一つ大きく用いていたのが「子供から見た大人」という存在。
確かに自分も中学~高校の頃は大人は何でも知っているような気でいたし、良くも悪くも親が絶対という印象もあった。
家で友達同士で餃子パーティなんてしてるのが大人なんて印象は持ち合わせていなかっただろう。
しかし実際アラサーに「気づいたら」なっていた。未だに知らないことはたくさんあるし(単に知識でいえば受験勉強してた頃のほうが多いんじゃない?)、仲の良い人らと宅飲みをすることもある。

実際「そんなモン」なんだ。
思っていたよりもダメな人は多いし自分も想像していた「大人像」とはかけ離れている。
デリケートで扱いに困る遺品を渡されても、どうするのが正解かは自分も「知らない」。
そしてそれを自分が同じ高校生くらいの時の年齢に触れれば、その対応に困惑したであろうことは想像し易い。

人間って案外そんなもん、だからこそ肩肘張らずに丁度いい距離でいられるし、そういう関係こそ尊いものでもあると感じた。


ただ少し気になったのが、シーンごとの繋がりがやや不自然だったり、妙に映像が切り替わる速度が速すぎると感じたところもある。
せっかく心地の良い空間を味わいたくも、少し没入感に欠けたかなと感じる箇所も多かったのが本音。
ヤッスン

ヤッスン