怪物の木こりのくさむすびのネタバレレビュー・内容・結末

原作を予習して鑑賞。良かった点もあるけど、総合するならば原作小説の方が好きだった。
映画ならではの良さが今作はある。特に中村獅童演じる剣持。パチンコ店にいるシーンの回想では怒鳴り散らかしていたのが、警察の前ではそこまで怒っていない。しかしそれは彼が感情を取り戻していたからだということが分かる後半の伏線回収には感動した。今まで通りサイコパスを演じる剣持と感情を発し出した二宮の対比も上手い。
それに後半の改変もとても良いと思う。今作はサイコパスvs殺人鬼というのが目玉の様に思えるがそうではなく、謎の殺人鬼の正体は誰なのかというミステリーと人間らしさを取り戻していく二宮のドラマが軸となる。そういう意味では映画オリジナルのラストである、二宮の映美に対する行動はより人間らしくなった彼を拡張して描いていて素晴らしい。ただ脳チップの故障により感情を得る様になっていくまでの心情の変遷が全く読み取れない。この描き方をするなら、二宮が殺人鬼に襲われる前の日常生活をもっと描くべきだと思う。あのフラッシュバックはとても脳チップによる影響に見えないし、歌を聴いて泣く意味も今作だとパッとしない。スマホで殺そうとしたのに躊躇ったシーンは、亀梨和也の細かな演技もあって良かったけど、それも結局亀梨頼りになっている気がした。