中庭

人体の構造についての中庭のネタバレレビュー・内容・結末

人体の構造について(2022年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

開頭術において綿状の重大な組織を避けながらチューブを抜き取る、腰部から四つ穴を開けて高性能のマシンのアームで前立腺を取り出し袋にしまう、水晶体の濁りを文字通りするすると吸い出して行われる局部麻酔下のレンズ交換術、母体に真正面から捉えられた帝王切開の一部始終など、設置された管や穴から何らかのものを抜き取る瞬間の視覚的な快楽に非常に自覚的な撮り方をしていた。あまりにズルズル引き抜かれるのを直視していると、鑑賞者の脳や指先が震え上がるようなスリリングな感覚を得られる。知覚に直接刺激を送るような強烈な映像が続く中、日本でいう介護施設の日常のような、高齢者の集められた病院の一角でパーキンソン病?患者の老女がずり足で進む時間そのものを追体験させる長回しや、老々介護に見えた隣の老女がリストバンドをしていると示されるショット、不意に映り込む丸窓にこちらを覗く男の顔が入り込むなど、人体の外見をテーマに撮られた記録映像も十分に見応えがある。手術のシーンと対比的に、時間をあえて割く演出が試みられる。医学、医療の映画として捕捉するならば、これがスクリーンにかかるのは偉業。医師の人間離れした身ぶりの本質を集中的に表現する手腕そのものが向かう先に臓器や病変があり、それは持ち主の肉体を語ろうとする。数秒のかけ引きが繰り広げられる心外のオペはさすがに撮れなかったのかもしれない。先生方の人格は、日本の医師に比べ穏やかさすら感じられた。
中庭

中庭