ヒムロ

パラダイス 人生の値段のヒムロのネタバレレビュー・内容・結末

パラダイス 人生の値段(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

誰かの寿命を金で買い、そして寿命を売る企業“AEON”。
この寿命の移植システムは今や懲役刑や銀行の担保にも使われている。
AEONの優秀なセールスマンのマックスは妻のエレナと子供を授かることを目指して順風満帆な生活を送っていた。
しかし、自宅のマンションがロウソクの火の不始末で焼け落ちてしまう。
保険が降りない中、マックスには内緒でエレナが寿命を担保にしていた事が明らかになり、エレナは40年分の寿命を奪われてしまう。


めちゃくちゃ後味の悪い映画だった。
いや正当な意味でもストーリー的には後味が悪いのだが、作中のエレナが嫌な奴すぎてめちゃくちゃモヤモヤする。

二人の生活のために寿命を担保にしていたエレナは「自業自得だ」と自分で言ってマックスと距離を置く。
まぁ自業自得なら距離置くなよマックスが可哀想だろと思わなくもないが、ここは同情できるしAEONで働くまだ若い夫に愛してると言われても憎んでしまうだけだろうから納得がいく。

その後、マックスはAEONのCEOタイセンに助けを求めるがちょびっと昇進して給料が良くなったぐらい、その上エレナの寿命の移植先がタイセンだったので怒りのあまり誘拐。
闇医者でタイセンからエレナの寿命を取り戻すためにエレナにリトアニア行きを誘う。

ここでは誘拐に加担するか、「そんなの頼んでない!」と突っぱねるかの二択を迫られるのだが、エレナは寿命を奪い返すために誘拐することを決断。
海路で移動中には「人生はもう終わったと思ってたわ」とマックスにご機嫌でイチャイチャするエレナ。

しかし誘拐した少女がタイセンの隠し子だと名乗ってからは態度が一変。
無関係の子だし寿命は奪えないとめちゃくちゃ喧嘩になる。
実際この子はタイセンの隠し子なのだが、まだこの時点では寿命を得て若返ったタイセン疑惑があるのに何で急に手のひらを返してくるのか。
さっきまでノリノリだったのにめちゃくちゃマックスを犯罪者扱い。
いやいやお前も加担してるし…こんな女のために命懸けで仕事も捨てて誘拐しているマックスがどんどん気の毒になってくる。

そしてラストにはテロ組織アダムによって火事がタイセンによって仕組まれた事だと発覚。
タイセンの娘マリーを殺せと脅されたエレナはそれでもマリーを生かします。
本物のタイセンが現れて交渉に入るも決裂、タイセンは撃たれて死亡。
AEONとアダムが撃ち合う最中、エレナとマリーを命懸けで助けるアダム。
一瞬の隙をつき、マリーがエレナを銃で撃とうとするも弾切れ、マリーは殴られ再び捉えられてしまいます。

本物のタイセンが死んだ今、無関係なマリーから寿命は奪えないというマックス。
しかし何故かブチギレてるエレナは「マリーから奪う」と急に殺意に芽生えてる。
火事を仕組まれて尚、撃たずにいたのに殺そうと引き金を引いたマリーを許せない様子。
「マリーから奪ってももうタイセンはいない。タイセンからマリーへ寿命を戻させることもできない!」と説得するマックス。
さっきまでエレナが言っていた事とそう変わらない人道的な事を説いてるはずのマックスを車から追い出すエレナ。
やりたい放題すぎる。

キレる気持ちは分かるが何故マックスが追い出されているのか。

そしてマリーから寿命を奪ったエレナはEDでは別の男とキスして妊娠までしている。
タイセンは防弾チョッキで助かっていた事がここで明かされるのだが、だったら「マリーはタイセンから寿命を分けてもらえるはず」という二人の認識から言えば仲直りできていても良いはずなのだが…。
マックスはそのままアダムの構成員(リーダー?)になっている。

妻のために全てを投げ出したマックスなのにただ職と平和な人生を失ってテロ組織に入っただけで、かたやエレナは念願の子供を授かって若返り、犯罪のことを何も知らない男と結ばれている。
タイセンは生きているしAEONの犯罪は明るみに出ていない。

本当にマックスが不憫すぎるという意味で後味が悪い。
もう中盤ぐらいからはエレナにムカつきすぎて話が全然入ってこなかった。
ストーリーも設定もいいのだが、ヒロインが全然救う気になれないのはどうしようもない作品だと思う。
ヒムロ

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