無影

ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーの無影のレビュー・感想・評価

5.0
ハリウッド映画に触れる人は必見と思ったので、★5。
本作は、ハリウッド映画がいかに「男性の眼差し(Male Gaze)」により女性を客体化してきたかを、往年の名作からオスカー受賞作、はたまたアメコミ映画まで、新旧幅広い作品からピックアップして具体的な例により指摘しています。ハリウッド映画において、セックスの場面は男性ではなく女性の身体が大抵映されますが、それ自体が男性に占められたハリウッドの女性を客体化したいという欲望を満たすための行為であるというのは、確かにと思わされました。
そして、観客が作中の主体に身を置いて場面を眺める「移入(Transferation)」効果によって、映画の中で客体化された女性を眺めた観客が、男性であれば女性は客体化するもの、女性であれば女性は客体化されるものという観念を反復強化されてきたと問題提起します。確かに、MeToo運動の発端は出演を餌に女優を自身の性的欲求のはけ口として客体化しようとした男の存在ですし、本作を観れば、映画の持つ視覚言語による洗脳の恐ろしさが分かります。日本ではSNS上でフィクションと現実は違うから2次元の性的画像は規制すべきではないという言説が散見されますが、客体化された女性のビジュアル化という点で、ハリウッド映画と同じ病理を抱えていると思います。最近朝日新聞に載っていた小児性愛者のインタビューで、性的画像は自身の性的欲求を解消するどころか、むしろ強めていくという発言がありましたが、これも「女性=客体」という視覚言語の持つ洗脳力の強さを物語っています。また、インスタグラムのヘビーユーザーの少女による自殺が増えているというニュースもありましたが、これも、細身、美人、美肌といったアイコンのような客体化された女性が大量に流れてくる故の弊害だと思います。
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