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ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーのmnsのレビュー・感想・評価

4.0
『キャリー』を引用した部分に1番腹落ちした。私が映画を観るときの姿勢や意識がどういうものか、スクリーン内で客体化された女性を観てなぜ私は薄ら居心地の悪さや恥ずかしさをおぼえることがあるのか、その答えが言葉になった。

人によっては苦虫を噛み潰したような顔になるかもしれないし、ほんとは聞きたくなかった指摘に自分のこれまでの映画体験が揺さぶられるようなショックを感じるかもしれない。ニナ・メンケスらの言うところ全てを両手を上げて賛同するかどうかは置いておいても、観客の鑑賞姿勢の中にいかにmale gazeが潜在的なものとして根付いているか、刷り込まれているかを自覚するきっかけとして、そして繰り返され複製されるイメージがいかにスクリーン外での差別や暴力を助長してきたかという、大きな構造に目を向けるきっかけとして、恰好の教材ムービーであることに間違いない。名作・名シーンがどのような視線を経由したものなのか、時代を超え改めて問い直してみるという試みは、決して難癖付けでも揚げ足取りでもないと私はおもう。映画を作る人はもちろん、映画を勉強していたり映画について物を言ったり書いたりする人、そういうことに関心のある人はひとまず観てみるといいと思った。感想を聞いてみたい人が何人か思い浮かんだ。
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