あかぬ

ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーのあかぬのレビュー・感想・評価

4.0
呪いを解け!

独自の美学で映画製作を続けるニナ・メンケス監督によるドキュメンタリー。
フェミニスト映画理論家たちが探求するMale Gaze=“男性のまなざし”問題について、ヒッチコック、スコセッシ、タランティーノといったアメリカを代表する映画監督作品から、2020年に至るまでの映画作品のクリップを用いて解き明かしていく。

映画における男性のまなざしがいかに女性のモノ化・客体化を引き起こしてきたかを講義形式で語る映画だけれど、作中に引用される映画作品のクリップたちは効果的に使われているものもあれば、中には前後関係を無視した切り抜きでしかないものもちらほらありイメージの扱い方に雑さを感じたのと、男性のまなざしに絞って論じているから仕方ないのかもしれないが男性は少々置いてけぼりにされてしまうような空気感があった。
引用されたクリップの中には女である私がこれまでに観て惹かれた映画がマイナスイメージとして紹介されていてなんだか複雑な心境でしたが、それが素敵だと感じた当時のピュアネスな気持ちやその映画のことを否定してしまうのは悲しいので、これからは自分の中に潜在的に存在している男性のまなざしについてちゃんと自覚しようねと思った次第でした。

それと、最初は性行為を嫌がる女性もゴリ押しすればすんなり受け入れる、嫌よ嫌よも好きのうち描写が多い件について、これが現実世界の差別や性加害を助長させてるって話はあながち間違ってないかもと思った。映画が人に与える影響力は相当であるというところが映画の怖さでもあるんだけど、それがプラスに傾いた作品もたくさんあって、この映画もそういうふうに世の中に少しでも良い影響を与えてくれる作品になるんじゃないかなと思った。(全ては肯定できない)
映画の捉え方を広げる良い体験となりました。映画好きな人は観た方がいいでしょう。


映画で描かれる女性像が現実世界の女性に呪いをかけ、美しさや若さこそが女性の価値であるという思想を観る者の脳に植え付ける。そして男のみならず当事者の女でさえもがそうであると信じてしまう。
自らの容姿を蔑んで自分には価値がないと思い込んでしまったり、若い女が若さを無くした女を馬鹿にして無自覚に自らの未来を呪うという最悪な構図を今まで何度も見てきた。みんな、そろそろその呪いから解脱する時だよ。
あかぬ

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