奪い取った文化の味はどうだ。そんな声が聞こえて来そうな映画だ。
ディストピアを題材にしているが、今、現実に世界のあちこちでこれと同じ事が起きている。
多様性を謳いながら発言は自由でなく、作品には規制がかかり、誰もが自らの炎上に、もしくは自分が愛するコンテンツが「どこかの誰か」に燃やされるのではないかと怯えている。
武力で地球人類を乗っとる作品は数多あるが、本作の宇宙人は経済的に地球を追い詰める。結果として貧困が蔓延り、明日への希望は持てない。自殺する元気が出るものはそうするが、この灰色の世界ではそれすら難しいらしい。安易な希望は描かれず、陰鬱でダラダラとした絶望が毎日、1gずつ溜まっていく。
今年観た映画の中で一番面白かった。こんな傑作があったとは。