甲子園の魔王

劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100の甲子園の魔王のネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

「それはこの映像を送り付けてきた何者かの視線…とでも……これ俺なんか見たことあんな」
☝️このオープニングよくないすか?よく聴くナレーションの人が(監督でもあるが)ストーリーの当事者として介入してくる一種のメタ構造。

Jホラーのじめっとした怖さってミステリーにおける謎(違和感)を紐解いていくことで真実が浮かび上がってくる感覚に近いと思っていて、そこに観客が求めるのが物理的な説得力か恐怖かの違いくらいで…いや、やめよ。俺はこんな感想言いたいんじゃないんだよ。
この映画ってジャンプスケアもないし、超常の脅威度もそんなに高くないし、俺自身普段ホラー観ても全然平気なのに、何故かこれ観終わった直後のトイレまでの道のりは暗がりからの視線を錯覚するほどスリルがあった。午前3時という時間帯も良くなかったけど、本当に誰かについてきて欲しかった。

俺がモキュメンタリーホラー好きでツボを押さえている作品っていうのもあるし、特に今作はモキュメンタリーのなかでもかなりリアリティが高く、まんまと恐怖を現実のもののように錯覚させられてしまった。
コロナなどの時事を絡めていたり、制作過程上のゴタつき方・ギスり方が生々しさを醸し出している。

幽霊や怪奇現象ぎゃあああばかりがホラーじゃないんですよ。
終盤なんて、家の中でビデオ探してるだけなのになんでずっと緊迫感があり不安にさせられる。幽霊が映って何か危害くわえてくるとかじゃなくて、柱の裏や廊下の奥や、あるいは気付いてないだけで視界の中に何かいるかも…と思わされている時間が既に絶賛恐怖の渦中。旅行行く計画たててる時間も旅行の楽しさのひとつじゃないですか。

あと普通に笑える部分も多くてそれも興味の持続に一役かっている。
心霊YouTuberとの違いの部分も、決してどちらかを見下してる訳でもなく、しかしほん呪はこうなんだ!という矜持を感じられてアツい。

あの大学の先輩は”疱瘡神は赤を嫌う(本当は好む)”という設定が明かされたときは巻き戻して先輩の服の色を確認しにいったくらいには疑わしく思っていたので、ラストのやり取りは答え合わせされたようですっきりした反面、個人的には無い方がより強く違和感が残るので嫌な恐怖を味わえただろうなとも思う。
やるにしても、あの女性スタッフの不審そうな表情はもう怪しんで下さいねって気持ちが出過ぎていて野暮。「なんで杉田さんのお母さんだけがシゲモリさんの事を鬼っていったんだろう…」くらいの、思い返した時に違和感が残るくらいが丁度いい。
甲子園の魔王

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