Jun潤

SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる ディレクターズカット版のJun潤のレビュー・感想・評価

3.3
2023.07.12

山下智久主演×高杉真宙出演。
アマプラ限定配信のドラマ作品が、特別映像を加えてディレクターズカット版として劇場公開。
せっかく観るならスクリーンでしょうよと、今回映画館にて鑑賞です。

漫画家の泉本真治は、web上で「ONLY FOR YOU」という作品を連載していた。
作品への強いこだわりを持ちながら、大作にするべく作品の方向性を無理矢理変えようとしてくる編集者に辟易とし、徹夜を繰り返すなどして執筆に取り組んでいた。
しかし、病魔は静かに急速に真治から視力を奪う。
突然奪われた普通の生活、絶たれてしまった漫画家としての夢、自暴自棄になる真治。
そんな真治を支えるのは、ずっと一緒に漫画を作ってきた中村と、偶然出会った真治のファンである哲也、そして真治の作品に救われてきたろう者の響。

う〜ん、うん…。
キャラは良い、めっちゃ良い。

それまでは当たり前に見えていたものが突然見えなくなってしまった真治。
点字も読めなければ家の中は見えなくても生活できるようにはなっていない。
緊急時に助けてくれる家族がいるわけでも、目が見えなくてもできる仕事なわけでもない。
そんな状況から身を投げたくなる様や、響との出会いによって生きる希望を見出していく様はとてもドラマチックでした。
顔は見えないし響は話せない、紙に書かれた彼女の気持ちを見ることもできない、でも目の前に確かに存在していて、響のことを愛していることはわかる。

生まれつき(?)耳は聞こえず、好きな漫画に出てくる曲を聞こうと音楽を再生して、どれだけ音量を上げても何も聞こえない響。
話すことも自分の声を出すことも怖いからできないし、文字で真治に気持ちを伝えようとしても伝えられないし、真治が言っていることもわからないけれど、目の前の真治に愛され、真治を愛していることはわかる。

自分の夢である漫画を売って響への愛を買った真治と、真治から愛される自分を売って真治の夢を買う響の、辛いすれ違いと悲しい愛情もまた良かったです。

脇を固めるキャラたちも、夏木マリ演じる湯婆婆×銭婆な婆ちゃんに、山本舞香見た目とマッチしすぎ(褒め)な嫉妬深い中村さん、最近のフレッシュなイメージとは正反対にネチネチなよなよの高杉真宙演じる大輔と、嫌いな点も好きな点も両方ある人たちばかりでしたね。

しかし、なぁ〜…、連続ドラマでやって欲しかった……。
聞こえる人と聞こえない人、喋れる人と喋れない人、見える人と見えない人でも十分にドラマが展開できるというのに、今作では見えない真治と聞こえない響という、壮大な人間ドラマの予感たっぷりな設定。
上述の通りそれぞれのキャラが良かっただけに、二人が合わさった途端ドラマが尻すぼみになるとはどういうことか。
たとえば目が見えない、自分でどう動かしているかわからないけれど響に想いを伝えるために真治が手話を習うだとか、序盤に少しだけ出てきた響の発話教室など、いくらでも展開できる、むしろ見せて欲しかったドラマの種があちこちにありました。
それでなくても、作中に少しだけ出てきた人工音声や自動文字起こしなど、障害や言語の壁を越えた交流方法の一つとして今後さらに活用されるべきシステムの描写が足りておらず、響がなぜか習得しているあまりに高度な読唇術にその分寄せられていた印象です。

それに中村さんや大輔の存在も、真治と響の恋路を時に掻き回し時に背中を押すライバルポジや、ドラマをシリアスにしすぎないコメディリリーフな存在としていくらでも活かせそうなところが、中途半端になってしまったためにどちらも二人のドラマのために都合よく動く舞台装置になってしまっていた印象です。

映画にしても配信なのだから、連続ドラマにしてもう少し描写が欲しかったですね。
Jun潤

Jun潤